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援助
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あの夜…。
母親の浮気がバレて父親が激怒した日から1ヶ月間、父親は魂が抜けたように家から1歩も出なくなった。
目つきが変わった、生きた目をしていないのだ。ただ怖かった。このまま消えてしまいそうだと思った。
「父さん…。清さんに連絡してみたらどうかな?働くの辛いなら、助けて貰えばいいし。俺も働くし、今はまだ無理だけど!会社の手伝いするから、だからお願い。戻ってきて…。」
少しの沈黙が続いたあと、父親が口を開いた。
「そうだな、がんばるよ…。」
「うん!」
あの時、どうして父親が居なくなる未来を感じていたのに、頑張れ。などと追い込むようなことを言ってしまったのか。
そのあとは早かった。
清さんから資金援助を受け、会社を立ち上げて倒産するまで。
父さんは経営にも強いはずなのに、タイミングかそれとも心の傷が大き過ぎたのか。
1人ぼっちになるまでの時間はそう、かからなかった。
真っ暗な部屋。
家に鳴り響く電話の音。
受話器から聞こえてくるよくわからない大人の不安そうな声。
わからない。何が起こっているのかわからない。怖い。辛い。誰かそばにいて欲しい。
「大丈夫?」
この時は救いだったのだ、この声がこの手が全てだった。
あの夜、あの手を取った時から全てが狂ったのだ。
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