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「あのー……深谷くんてさ、目ぇ悪い?」
お医者さんみたいに俺の顔を覗きこむ浅原に、緊張して殴りかかりたくなるのをこらえる。あー。隙だらけだなあ、こいつ。骨とか簡単に折れる……やっちゃ駄目だけど。俺もうそんなバカなことしないから。
「え、え?」
「や……たまに目付き怖いから。もしかして、そうなのかなって思って」
「っ………………………あ、え、わかんな、そうかな?」
頬に触れられて、自分のほっぺたが熱いのを知る。恥ずかしい。つかこいつ、手ぇでっかいな。えろい。
「違うの?」
「や、やー? どうだろ、そうかも、あははっ」
「…………」
「っん………」
耳たぶにするりと手は伸びて、くすぐったい。あ、やばい今度こそバレるかも既にバレてる?
「気になってたんだけどさあ、ピアス。こんなに穴開けといて、なんで一個もしてないの?」
それはね? ヤンキーやめたからだよ?
言えるかぁぁぁああ!!!
「……あ…………えと………」
うあ、どーしよ。なんも言えね。嘘。嘘が思いつかない。だってどう考えてもピアスの穴はピアスの穴だ。ガッツリ軟骨までやっといて、言い訳もなにもない。
「……………てかさあ、これちゃんと病院でやった?」
「ん、くすぐった…………あんま触んなよ……っ」
「耳弱い?」
甘ったるい、からかうような声。どっから出してんだそのボイス。きっしょ。耳? 弱点じゃねえけど?
弱点はやっぱみぞおちと後頭部と、だいたい、そんな。
教えてやらねーけどな、弱点なんざ。
「…………弱い……かも……っあは、あんま触んなって……」
適当に笑ってはぐらかす。あははのは。あー早く離れろよ蹴飛ばすぞコラ。
「これどーやって開けた?」
「え…………」
「自分で? それとも人にやってもらった?」
「あ、…………人に、かな」
「…………どーせ安全ピンとかで適当にやったろ?」
「えっ、わかる?」
「見りゃわかる。雑すぎ。誰にやらせたんだよ」
「っ…………………………………あー、あは」
そらもう。当時の先輩とか当時の先輩とか当時の先輩とかですよ。
……あんなに優しかったのに、俺が抜けたいって言ったら半殺しだったもんなあ。
でもあれも、一応はルールだった。
俺が絶対に戻らないための。
「………よく化膿しなかったな」
「へー。お前詳しいのな」
ふう。やっと離れてくれた。こいつ、なんか気まずいなー。距離感おかしいもん。や、まともにまともな友達いたことないからよくわかんないけど、こいつもこいつで、ホモだからなんかおかしくなってないか?
よくわかんないけど。
「……………あ、……浅原くんも開けてるもんね、ピアス」
「…………………あー」
「なんでかたっぽだけなの?」
「は?」
「あ? ん、んんっ、え、なんか意味とかあんのかなって」
「……………………サウナとかジムとかで鍵、足につけるのと同じ意味」
「え? ごめん全然わかんねんだけど?」
「…………………………………………………………………………あそ」
きびすを返して去っていく。うおおーい。ちょっと待てやコルァ。さすがに俺でもわかるぞ。ここで会話ぶったぎりはどうなんよ。どうなんよ一般人ゴルァ。
「あ、え、…………っ浅原、……くん、」
だーりぃ。ちきしょー。呼び捨てじゃ駄目なのかな。なになにくんとかなになにさんとか、めんどぅえーよ、だりぃよ。つーか言いてーことあんならさっさと言えや足りねんなら拳で語れや男だろうがいやいや俺はもうそんなことしないこいつもそんな奴じゃない。あほ。俺のあほ。
人間は言葉で理解しあえる生き物なのです。唯一の。
ってなんかの宗教かドラマか漫画で言ってた気がする。
ん? なんかの宗教の漫画だっけ?
まあいいや。
なんか考えなしに袖掴んじゃって、振り向いた浅原に抱きしめられてんだけどこれってなに。何をどう解釈すればいいの?
ハグ。
バグってんの世界?
あ、愛は地球を救うんだっけ?
ゾゾゾってするんだけど抱きしめられたら抱きしめ返せばいいのかな? よくわかんねーよ。なにこれどゆことー。誰かー。右の頬をぶたれたら左の頬を差し出しなさいは聞いたことあるけど、ハグされたらやり返しなさいとは聞いてなかった。
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