アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5
-
キモチの悪いオトモダチごっこは不定期に訪れるので、俺はわりと慣れている。誰だって不安になるときはある。水野は昔つらかった分、それが深いんだろう。
泣き止むまでそばにいてやる。弟とかいたら、こんな感じなんだろうか。まったく、普段はお前のが優位なんだけどな。つか自分のスペックの高さはいつになったら理解するんだ。金持ちの一人息子で一生愛されて一生安泰じゃねえか。見た目だってそんな悪いわけじゃないんだし、頭もいいし、人には丁寧に接するし、俺とは違って常識あるんだし。子供の頃にぶち壊された自己肯定は、大人になっても取り戻せないものなんだろうか?
「そろそろ髪切りたいんだけど」
落ち着いてからしばらく経った頃、水野に相談を持ちかける。俺のセンスで選ぶと服もヘアスタイルもいかついので、更正してからは水野に全部任せている。だってどうせ俺が気にいらないやつだし。なんで世間はこんなダルいヌルいもんが好きなんだ。
水野は自分のことには無頓着なくせに、やたら俺の見た目にはこだわる。いや、地味でいいんですって。菅田将暉にしてくれとか言ってんじゃないんだから。
大学に入る前、私服なんかよくわからなくて、水野が着てるようなもんでいいよ、っていったら、わりとしっかり怒られた。そこまでダサいのは駄目! らしい。お前ダサい自覚あってダサい服着てんのかよ。どういう趣味だよ。
「染める?」
「あー……なんでもいい」
「んー」
「つーか黒染めしなくていいの。そんなに明るい髪のやつって今いなくね?」
「あー。ねー」
「ブリーチかけまくってっからすぐ抜けっし」
「んー。でも黒はなあ……。就活でやんなきゃいけなくなるから………。今はアホみたいに遊んでるほうが大学生らしいよ」
「アホ」
「アホ。あ、水色にする?」
「それはさすがにやだ」
これから夏だし、短くしたいと伝える。真剣にスマホを見ていた水野は、あ、と言って俺を見た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
83 / 197