アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
11
-
先を進んでいた俺の隣に火早野が小走りで並んだ。
「ねぇ水本、今日の映画さ、
ホラーだけど怖いの大丈夫?」
「そういえば、何観るか聞いてなかったな」
行く日を聞いただけで、内容については何も話してなかったことを思い出した。
「ホラーは大好きだから、観れる」
「…大好き…」
180もある男が俺の言葉で照れたと考えると吐き気がしそう。
というか、隣で顔を赤くするのをやめてほしい。
ニコニコしてこっちをみるな。
「……きもい」
「え……」
ショックを受けたのか悲しい目を向けてきた
こいつに犬の耳と尻尾があるのなら
今は『え、なんで?』と力無く垂れていそうだ
「ふっ…」
たったの数秒で顔色を変えすぎだろ。
これは少し面白いかも。
俺の笑った顔を見て目を見開く火早野
「っ………水本」
「なに」
「好きだ」
急な告白に驚いて火早野の顔を見た。
この日一番後悔したのはこれかもしれない。
火早野は心底幸せそうな優しい笑顔を浮かべている。
その表情を初めてみる俺は
心臓が騒ぐのを感じた。
なんだろう。
なんて言ったらいいんだろう。
ザワザワと煩わしいようでそれが心地いいこの感情は
どう対処したらいいんだろうか。
「…水本?」
火早野は眉を下げ、心配そうな顔をする。
俺は火早野を見つめながら
自分が何故か泣きそうになっている事に気づいた。
「……きもい」
「水本あのな?俺、好きな子にきもいって何回も言われたら傷つくぞ?」
「まだ2回しか言ってないだろ」
そうじゃなくて!と叫ぶ火早野を置いて
俺は先に歩き出した。
火早野のあの顔が頭から離れない
幸せそうで嬉しそうな顔
思い出してまた心臓が騒ぐ
なれない感覚に無意識で胸元をさすってしまった
「水本ー、映画観る時にポップコーン食べる派?」
「食べない派」
「お!まじか!俺も食べない派!水本と一緒だ!」
またニコニコと嬉しそうな顔
でもその顔はさっきの表情とは違っていたのか
心臓が騒ぐことはなかった。
「きもい」
「きもいって言わないで!!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 12