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姫崎組
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「ちょっとこっち来い」
「え、ちょっ…!」
乱暴に腕を掴まれ、奏に引っ張られながらふらつく足を精一杯動かした。
そうして彼に連れていかれた場所は、教室が並ぶ棟より少し離れたところにある、空き教室が並ぶ棟。
ここに来るまでに下級生にも上級生にもまじまじと見られ、少し恥ずかしかった。
「…あ、の…」
「俺は、父の会社があったから今の部下がいる」
「え、」
初めてまともに話した奏に、帳は驚きを隠せない。奏がいじめの主犯格だと思っていたからだ。
「あの…」
「アイツらがお前に手を出したのは俺が原因だ。昨日教室に入って、俺がお前のことを見つけて、目が離せなくなっていた」
どういうこと…?と帳は頭が整理しきれず、そこに棒立ちになっている。
そして、奏の金色の髪が、外の太陽に反射してキラキラ輝いているからと言うのもある。
「それを見た俺の部下が、お前に嫉妬して階段から落としてしまった」
しっと…?
嫉妬…
………嫉妬!?
「え、ちょっと、待ってくだ、さい!…ぁの…しっ、と、てど、どういう意味ですか…?」
「そのままの意味だ」
「ぁ、いゃ、そ、うじゃなくて…」
奏は頭にはてなマークを浮かべて首を傾げている。まさかこんななんの取り柄もないただの男に、男が嫉妬!?
意味がわからなかった。
しかし次の瞬間、その意味が分かることになる。
「…んっ」
唇に暖かい感覚がある。まるで人の唇のような…。
「…って、は!?」
キスをしていた。
それに気付いたのは、唇が当たって10数秒経ってからだった。
「なっ、何して…」
「好きな奴にキスして何が悪い?」
「…は…?」
待て。今なんて言った?…好きな奴…?って僕の事か…?
帳は頭の整理が追いつかず、ショート寸前だった。そして整理しきれないまま、
「ごめんなさい…!」
そう言ってその場を飛び出した。
残された奏は、あーあ、振られたか。と言って窓際に身を委ねながらスマホを取りだし、なにやら操作をする。
【お前らもう琴畑 帳には手を出すな。俺はフラれた】
奏のスマホ画面にはそう書いてあった。
姫崎 奏の両親は世界中で名の知られている、姫崎グループの代表取締役社長の父と、その補佐で秘書をする母だった。奏はその跡取りとして育てられ、側近や部下といったものが付けられていた。
しかし姫崎家は表の顔だけではない。
姫崎組と言えば、裏社会で知らないものは居らず、多くの配下を持つことで有名だ。
帳を手に入れられなかった奏は、最終手段を打つことを決意した。
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