アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
新生活
-
のどかな田舎から約3時間。賑やかな都会は息苦しいと言う人も多い。
足早に歩く人々、びっしりと並ぶ高いビル。季節を感じないとはこのことなのかもしれない。
それでも、春本颯の心には希望しかない!!そう叫びながら胸を張って歩きたい気分だ。
今日から新しい日々が始まる。重い荷物も人混みも、全部が明日につながる。
地方から撮影に何時間もかけて通いながら田舎のごく普通の高校で過ごす方がむしろ息苦しいということを身をもって体験した。
田舎では売れっ子モデルなんて目立ちすぎる。撮影の忙しさを言い訳に学校をさぼっているなんていう陰口も何度も言われた。悲しくはなかったが悔しくて、モデルと学校を両立させようてして苦しむこともたくさんあった。
でも、ここでは誰もモデルをしている自分を咎めない。
噂もしない。指も差さない。
だってみんな自分の今を生きるのに必死で、周りの人なんて関係ないって顔してる。
空は狭いが世界は広い。そんなことを思っていると、不意に着信音が響いた。
「颯、長旅お疲れ様。もうそろそろ着いた?」
マネージャーの中川さんだ。30歳くらいのお兄さんって感じの人で、去年からずっとお世話になっている。本当に頭が上がらない。
「はい!そろそろロータリーに着く頃です。もしかして待たせちゃってる!?」
少し焦って小走りになる。すると、電話口で笑い声が響いた。
「ははは!大丈夫だよ、そんなに待ってない。それに・・・」
顔を上げると見慣れた車。
そして、運転席で笑う中川さんと、後部座席から身を乗り出す幼馴染の顔が見えた。
「颯の姿、もう見えてるよ。晴希が痺れ切らしてるから早くおいで」
新しい生活が始める。
本当に始まる。
心が躍るとはこのことだと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 13