アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
大御所役者の隣の席
-
結局、今日は隣の席に晴希が座って教科書を見せてくれることになった。
それにしても....
「晴希ー。俺もう田舎に帰りたい...」
食堂で豪華な昼食を目の前に、思わず頭を抱える。
「まぁまぁ、気持ちはわかるけどなんとかなるって。」
晴希はそう言いながらも苦笑いしている。
なんて無責任な奴だ。
そんな俺たちを見て、陸は首をかしげて笑った。
「春風はそんなに怖い奴じゃないよ。話すと意外と普通だし、かわいいとこあるぞ。」
さらりとそんなことを言う陸に、晴希は苦虫を噛み潰したような顔で、うげぇと呟いた。
「お前くらいのハイスペックだと余裕があって羨ましいよ...」
さすがにこれは晴希に同感だ。
春風息吹。
世間で名前を知らない人はいないだろう。
3歳で子役デビューし、出演したドラマや映画はヒット作ばかり。それだけでもすごすぎるが、高校生になって成長した今もその人気は衰えを見せず、むしろ役者としての成長も加速していると言われている。
そして、これはテレビではおそらくタブーな話だが———
10年前の子役誘拐事件。
幼いながらもよく覚えている。
生中継される古い建物を警察や特殊部隊が囲む様子。
説得を試みる警察の声。
男の叫ぶ声に、幼い泣き叫ぶ声。
銃声が鳴り響いて、青ざめて震えて呆然としている男の子が警察に抱えられて救急車に連れていかれる映像は連日流され続け、人々を騒がせた。
それから1年間、人気子役の春風息吹はテレビから姿を消した。
そして1年後、何事もなかったかのようにゴールデンタイムのドラマに出演し、世間を再び騒がせた。
ただ、テレビでは事件についての話はなかったことかのように一切触れられず、人々もだんだんと事件の記憶は薄れて、春風息吹という役者にただただ夢中になった。
「あの春風息吹の隣の席なんて、新人モデルがおこがましすぎるって叩かれないかな。」
そう言ってため息をつくと、晴希がまた苦笑いして言った。
「大丈夫だって。春風息吹の隣の席がお前だなんて一般人にはわからないし、それに、」
大きな口を開けてパスタを頬張りながら、呑気に続ける。
「大御所すぎて、俺たちの事なんて知らないかもよ?」
さすがにBOWのお前のことは知ってるだろうとツッコミたくなりながらも、もう考えるのも嫌になって、俺も冷めてきたパスタを頬張った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 13