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ひろとさんが買い出しに出てから一時間以上経っている。
「遅いし…」
さっきから悪寒が走っている。
嫌な予感がするのだ。
そのとき、固定電話が鳴った。
「……はい」
『こんばんは。◯◯警察の者ですが』
「……」
『髙梨洋兎さんのご家族の方であっていますか?』
「……そうです」
『我々も無念ながら、髙梨さんは今日起こった通り魔事件の犯人と同様の人物に刺されたようでして、大学病院に救急車で運ばせていただきました。こんな時間に申し訳ないのですが、お荷物を病院に運んでいただけませんか?迎えの車は寄越しますので』
「……わか……り…ました…」
『お忙しい中申し訳ありません。20時に迎えを行かせますのでお支度お願い致します。では失礼します』
最悪だ。今にも泣き崩れたい筈なのに涙は出ない。
きっと感情を越えてしまった。
放心状態のままひろとさんの部屋へ行き、ボストンバックに荷物を詰めた。
一時間半後、普通の軽自動車で警察が迎えにきた。
「荷物持ちますよ」
「……ありがとうございます」
「見た感じ高校生っぽいけど…いくつ?」
「…大学二年です」
「へぇ~そうなんだ。なんか意外」
きっと話を逸らして明るくしてくれているんだろうけど、今の俺には何も効かなかった。
病院に着き、部屋を案内してもらう。
扉の横には『髙梨洋兔 様』と書かれていた。
「……」
ノックをするが、返事はない。
ドアを開けて入ると、点滴や酸素マスクなどを付けられたひろとさんが眠っていた。
その姿を見たとき、やっとひろとさんの身に起きたことを理解し、涙が溢れた。
俺が代わりに買いに行っていれば、俺が早くあのニュースを見てひろとさんに知らせていれば、あの時ひろとさんに付いていけば。
ひろとさんはこんなことにならなかったかもしれないのに。
でも、今さら後悔しても遅い。
ベットの近くまで寄り、近くの椅子に座る。
「……ひろとさん……っ…」
警察の人は、俺のことを想って外に出ていてくれた。
ひろとさんの手に自分の指を絡め、目を固く瞑った恋人の回復を、一分一秒でも早くと願った。
次の日、大学帰りにそのまま病院へ寄ると、ひろとさんはもう目覚めていると言われた。
部屋へ行き、ノックをする。
「はい」
一晩振りに聞いた愛しい人の声。
ドアを開け、室内に入ると、本を読んでいたひろとさんは優しく微笑んだ。
「秋。おいで。」
本を机に置き、手を広げてベットの上で待っている。
涙を溢しながらゆっくりと足を進めてひろとさんにそっと抱きついた。
「ひろとさっ、ん……ひっく、っ…」
「一人にさせてごめんね」
頭を優しく撫でられ、泣き疲れと心地よさで眠ってしまった。
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