アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
曼珠沙華7
-
────レトルト視点────
夜の花街に来るのは久しぶりだ。
父上の目を盗んで会いに来ていたこともあって、夜に遊郭に行けたのはほんの数回だけだった。
夜、と言っても黄昏時が終わろうとしているぐらいだが。
街の人は俺とすれ違う度に無遠慮にじろじろと見てくる。
おかしいな、手拭いで顔を隠してるはずだけれど…俺だとバレないよな…?
早く店に入ってしまおうと足をはやめた時、前の方に華やかな光を見つけた。
それが花魁道中だ、と分かると、道行く人は皆足を止める。
「お、花魁道中じゃねぇか」
「いつ見ても美しいよなぁ、あの人は。噂によりゃあ男だと言うやつもいるらしいが、男でも気に入るやつなんて沢山いるだろう」
…そういえば初めてキヨくんを見たのはここらだった気がする。
思わず俺も足を止めてその姿に魅入ってしまう。
あの時の赤い着物とは違う、紺色に金の刺繍が施されている着物は、彼の妖艶さを際立てていた。
時折見える白い足首もよく映える。
ふと、キヨくんが顔をあげてこちらを見た。
「…っ」
一瞬、ほんの一瞬だが、綺麗な顔がくしゃりと歪められた。
すぐに傘がくるくるとまわって、顔を隠してしまう。
今にも泣きそうな顔に心がきゅっと痛んだ。
…どうしたのだろう、いつも笑顔のキヨくんがそんな顔をするなんて。
暫く顔を見せていなかったから俺の事を嫌いになってしまったのだろうか、
…いや、そんなはずがない。
橙色と藤色を混ぜたような色の空が、もう藍色になろうとしている。
俺はいつもの店へと足を動かした。
──────────────────────
「レトルト様!」
店に入り少し待っていると、2人の禿達が駆け寄ってきた。
「なぁに、今日は最中は持ってないんだよごめんね」
「そういうことではなくて」
「違うのか?じゃあなに」
2人は言いにくそうに顔を見合わせる。
「…今日は姐さんは具合が悪いそうで、他の方を指名して頂けませんか」
「…は?」
小さい背中がびくりと跳ねた。
…怖がらせたかな。
「…具合わるいの、キヨくん」
「はい…」
「俺に会いたくないんじゃなくて?」
「…それは、その」
歯切れの悪い返事、やっぱりそうなのだろう。
会いたくない、か…。
「キヨくんが会いたくなくても、俺は会いたい」
「そう言われましても…」
「俺は君達と対等な立場で接したかったから、この立場で言いたくはないんだけど。」
俺はこの国の皇帝の息子だよ、と言うと、禿たちは驚いたように顔をあげた。
「今すぐキヨくんをここに連れてきて」
2人の顔に緊張が走る。
「…分かりました、お待ちくださいませレトルト様」
「うん、それでいい」
…王族の権力濫用とは言わせないよ。
禿達が消えた襖の奥で、微かにキヨくんの声が聞こえた。
「…俺は行きなくない、レトさんに会いたくない!帰らせてくれよ…」
一瞬本当に嫌われてしまったのではないか、と不安になる。
その不安は次のか細い声に掻き消された。
「…会ったらもっと好きになっちゃうだろ、」
彼は俺が訪ねる度にいつも笑顔で迎えてくれて、そんな弱音なんて聞いたこともなかった。
何度陰湿な嫌がらせにあおうと、客の前では笑顔を崩さない彼は同じ遊女達からも一目置かれているようで。
そんなキヨくんの初めて聞いた弱音が、これ。
…可愛い人だ。
「キヨくんおいで」
俺がそう言うと、ゆるゆると襖が開いた。
現れたキヨくんは花魁道中の時と同じ紺色の着物を着て、三指をついたまま顔をあげようとしない。
「レトさん…今日はお相手できませんの、帰ってください」
「なんで?俺の事嫌いになったわけ?」
「ちがっ…とにかく会いたくないんです」
「目を見て言ってくれないと俺分かんないよ」
意地でも顔をあげようとしないキヨくんの袖を乱暴に引っ張る。
「ほら、顔あげ、て…」
驚いたようにこちらを見つめる目から大粒の涙が零れ落ちた。
何するんだよ、と小さく呟き、キヨくんが顔を歪める。
「会いたくないって言っただろ、なんで来ちゃうんだよぉ…いつも俺を振り回してっ!」
「なんで泣いて…?」
「煩い!初めて恋心を抱いた相手か一国の王子様だった時の哀れで穢れた男娼の気持ちが分かるのか、分からないだろ!」
穢れた、の言葉を吐き捨てるようにキヨくんが叫ぶ。
嗚呼、この人はこんなにも俺を好いていてくれているのだ。
キヨくんの目元の赤い化粧がじわりと涙に滲んだ。
「…だから帰ってくれよ、お願いだから…!」
「ねぇキヨくん、結婚しようか」
気づいたらそんな言葉が口から漏れていた。
もう少し格好良くするつもりだったんだけれど…しくじったな。
「…何言ってるんだよ、冗談もいい加減に」
「言い方変えないと分かんないかな…俺の正室になれ、って言ってんの」
呆然としているキヨくんの唇を奪うと、ようやく彼の涙が止まった。
「…正室はお姫様だろ、?」
「それは何とかするよ、俺がそばにいて欲しいのは君なんだ…受けてくれるよね?」
第2王子直々のプロポーズなんだ、断るなんて許さないよ。
1度止まった涙がまたキヨくんの白い頬をつたう。
なんでそんなに泣くの、もう泣き止んで笑ってよ。
キヨくんはぐしぐしと着物で目をこすり、まだ涙が残る目を細めて微笑んだ。
「…わたくしも、ずっとお慕いしておりました」
うん、知ってるよ。
────────────────────
終わってません!!!endじゃないです!!続きます!
Rいかなかったなぁ…
次回Rありです(多分)
久しぶりですが頑張ります(笑)
皆さんもう知ってるかと思いますが、私切ない系の話大好きなんですよ(突然)
メリーバッドエンド系のやつとかほんと好きで((
だからこれからも死ネタとか別れる系のネタとかいっぱい書いていくと思いますが、よろしくお願いしますね
でも甘々も大好きなので、沢山書いていきたいなーって!!
思ってます!!!
なんだこの中身のない話w
では次回をお楽しみにー!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
42 / 79