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曼珠沙華10
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────キヨ視点───────
目の前に立った男が笑みを見せる。
この人は、レトさんのお兄さんの、第1王子様。
レトさんといいこいつといい、なんで王子様方は連絡もいれずに急に来るんだろう。
こっちは振り回されてばかりだ。
「あー…俺はなんて呼べばいい?あいつと同じようにキヨくん、って呼んだ方がいいか?」
「…清、でお願い致します。そう呼ばれても虚しくなるだけですから。」
「虚しい?何故」
「…意地悪ですのね」
なんでこの人がここに来たのかは知らない、けれど大体予想ぐらいつく。
弟の撒いたいらない種を摘みに来たのだろう。
そのまま放置すれば何が咲くか分からないのだから。
「…なあ、キヨくん」
こいつ話聞いてたか。
睨みつけようと顔をあげると、満面の笑みが見える。
「なんでございましょう」
「うん、決めた。…貴方に言わなければいけないことがあるんだ」
「はぁ…」
改まってなんだよ。なんでそんなに焦らすんだ。
俺もあいつには甘いよな、と呟いて目の前の男は俺の耳に口を寄せた。
「今から言うことをよく聞いておけ。実は──…」
────────────────────
あれから3日。
黄昏時ももう終わるという頃、皇宮には多くの貴族が出入りしていた。
そりゃあそうだ、だって今日は第2王子レトルト様の婚約発表の披露宴だ。
他国の王族だって沢山招待されている。
建物の影に隠れていた俺を見つけ、布で顔を隠した男が走りよってきた。
「…約束どおりの時間。ほんとに来たんだ、キヨくん」
「貴方が来いと仰ったんでしょう」
そうだったな、と小さく笑って布を取ると、この国の第1王子様の顔があらわれた。
「…俺が中まで連れていく。父さんも客人たちも何も言えないはずだよ」
「…わかりましたわ」
3日前、この人が俺に話してくれたこと。
レトさんは俺を捨てたわけではない、ということ。
どうやらこのことで父親─現皇帝─と口論になったらしく、行動を終始監視されていたから、俺の元に来れなかったらしい。
とうとう父親に押し切られて勝手に婚約を結ばれてしまったこと。
本当は俺のことをずっと心配して、考えていてくれたこと。
この人はそれを俺に教えてくれた。
俺は嫌わけたわけじゃなかった。
第1王子様は腹違いの弟をとても大事に思っているらしく、俺をこの披露宴に参加させることを決めたんだ。
伝統的なプロポーズの方法に、披露宴の際、男性が相手の女性の元に歩いてゆき、その場で櫛をわたす、というのがあるらしい。
その櫛が、多分レトさんが前くれたもの。
金色の櫛を女性が受け取ったのなら婚約成立だ。
今日、レトさんはそれを俺ではない他の女性にわたす。
もし、もし本当にレトさんが俺の事を好いているのならば、俺に櫛をわたしに来る、と思う。
…たとえ少ない確率でも俺は諦めたくなくて、この作戦にのった。
レトさんは俺を選んでくれる。
信じてるよ。
「…キヨくん、大丈夫か。顔こわばってるぞ。せっかくの美人が台無しだ」
「大丈夫です」
この人に続いて皇宮に入ると、客がいっせいに俺の方を振り返った。
ざわざわと空気が揺れる。
…流石第1王子様、とか考えたけれど、どうも様子がおかしい。
──あの、第1王子様の後ろにいる方。
──やっぱりそう思いまして?…白珠様にそっくり…
──え、知らないんですの?お子様ですわよ。たしか遊郭で花魁をやってらっしゃる
──男娼かしら…何故ここに。
──あんな、いくつのときから身体を売ってるかも分からない…卑しいわ、あぁ嫌だ。
──どの身分でここに来てるんだ。
──場違いにも程がありましてよ。
…なんだ、俺か。
心配そうに覗き込んできた王子様を見ないふりして堂々と中央の方に進む。
いいんだよ、王族はどうせ理解出来ねぇだろうし。
もう慣れた。
後ろの方からくつくつと笑う声が聞こえて、王子様が隣に並んだ。
「…強いな、君は。」
「笑わないでくださいます?褒められてる気がしませんの」
「ふふ、褒めてるよ」
レトルトにはやっぱり君が1番合うな、と聞こえたのは多分気のせいだ。
暫く料理や酒を眺めていると、突然周りの人々が喋るのをやめた。
何事だろうと思って辺りを見渡すと、皇帝様が壇上に立っていた。
「…あれが俺たちの父さん。…知ってるか。もうすぐレトルトも来るよ」
「レトさんが…」
薄くなった髪の毛をかきながら、皇帝様は満面の笑みで自分がでてきた方を見やる。
能面を貼り付けたような笑顔の、綺麗に着飾った男が出てきた。
…レトさんだ。
心臓がどきどきと暴れ出す。
やっと、会えた…。会いたかった…っ。
レトさんはゆっくりと会場を見渡していき、俺を見て大きく目を見開いた。
きよくん、と小さく口が動く。
…うん、俺だよ。俺だよ、レトさん。
ずっと待ってたんだ、来てくれないから来ちゃった。
ようやく会えた。
熱くなる目頭をおさえる。
まだ泣かない、泣く時じゃない。
泣いたらせっかくの化粧が崩れてしまう。
レトさんは小さく頷いて、決心したように皇帝を見つめた。
皇帝様の長い前置きが終わり、いよいよプロポーズのとき。
ふと、隣の女性が目に入る。
檸檬色の綺麗な着物を身につけ、栗色の髪の毛の可愛らしい女の人。
…自信に満ち溢れた表情からして、多分この人が隣国のお姫様だ。
細くて華奢で、可憐という言葉が良く似合う人。
何故レトさんはこの人じゃなくて俺を選んだのだろう。
「…レトルト王子、お願いします」
召使いの誰かがそう言って、レトさんが壇上から歩き出した。
誰もが息を飲んでその姿を見守る。
歩く姿、立ち振る舞い、気品…まさに“王子様”。
嗚呼この人に俺は惚れたんだ。好きになったんだ。
レトさんは檸檬色の着物を通り過ぎてまっすぐ俺のところに来た。
「…キヨくん、お待たせ」
「うん、ぅんっ…待たせすぎだよ、馬鹿」
多分俺と、レトさんと、隣の王子様以外誰も何が起こってるか信じられていない。
「兄様、ご迷惑をお掛けしました…キヨくんを連れてきてくれてありがとうございます」
「気にすんなよ、俺は俺のしたいことをしただけだからな。」
それよりこれからどうすんだ、と周りを見渡す。
ぽかんと口を開けている客と、真っ赤になったさっきのお姫様。
ただの男娼に王子がプロポーズしたんだ、そうなるのも当然と言えば当然で。
「レトルトおぉぉおおおおおお!!!!何をしでかしたか分かってるのか!?!?」
皇帝の怒鳴り声にレトさんは目を細める。
真っ赤になった皇帝の方に向き直って、レトさんが深々と頭を下げた。
「父上、ここで縁を切ってくれても構いません。俺はこの人を妻に選びます。今までありがとうございました」
しん、と静かになった会場に、レトさんの声がひびきわたる。
「キヨくん、行こう…、って、泣いてるの?泣いてばかりだね、ほんと。」
「…うるさい。ひと月待ってたんだよ…」
「あはは、ごめん」
俺と来てくれるよね、とレトさんが泣きそうな顔で笑った。
…うん、もちろん。
どこまででもついてゆくよ。
俺が頷くのを確認して、レトさんが俺の手をひいて走り出した。
大広間から皇帝様の怒声が聞こえてきたのを無視して走り続ける。
「…レトさんっ、…おれ、おれっレトさんが好きだよ…っ」
「今更だね…っ、俺もキヨくんが好き…」
分かってる、俺たちの恋が敵にまわしたのは大きすぎるものだったことなんて。
逃げても追いつかれることなんて、2人ともわかってる。
だけど、だけど。
この人といれば何も怖くない。
突然前の方から、使用人たちの声がした。
──こっちか?レトルト様を探せ!
──ご命令だ、あの女は殺すんだ!
ばぁか俺は男だよ。
レトさんと顔を見合わせて逆方向に戻ろうとした時、後ろ側からも声がした。
──いたか!?
──いや、でもまだ遠くには行ってないはずだ!女は見つけたら殺せ!
ここは外階段、逃げ場はもうない。
目の前には深い谷が闇をおとしているだけ。
「…キヨくん、どうしよっか」
「レトさんに任せるよ。俺はどこでもついていく。」
「…わかった。しっかり手を握っててね。」
レトさんはそう言って俺を抱き抱えた。
大丈夫、レトさんとなら俺はどこでもいける。
「あ、いたぞ!!!」
後ろから声がした瞬間、ふわりと体が浮いた。
崖の縁に彼岸花が咲いているのが見える。
真っ赤な、まるで俺の髪の毛のような鮮やかな赤色。
血のような、死を意味する花、曼珠沙華。
どこかの誰かにそっくりだ。
end
────────────────────
いや、長かったッッッ
そして終わり方雑ッッッ!!!
許してください、途中で飽きちゃって…
私には長編は向きませんね(笑)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
曼珠沙華…
最初はいい感じだったのになぁ…
こんかいの雑さがえげつない。
許してぴえん。
オチ、というかエンディングはメリーバッドエンドです。
崖から飛び降りる、っていうね。
曼珠沙華要素忘れてて最後に慌ててつけました。
どこかの誰か、とはもちろん自分自身のことで。
レトさんにとって、俺は「曼珠沙華」のようだなぁと言っています。
死へと誘う花、曼珠沙華。
最初は菫、それから桃の花。夾竹桃、曼珠沙華。
こんなたくさんの要素を4分に詰め込んでるまふまふさんは天才だと思います。
とりあえず完結してよかった…最後は文章力酷すぎだけど。
完結したので、次はリクエスト来るまでお休みにします。
てか休みいらないんでリクエストください←
次回からはちゃんと書きます(フラグ)
大丈夫です(?)
じゃあ次回お会いしましょー
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