アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
過呼吸5 SideD
-
この作品のキヨさんの家庭事情は全て創造です、現実とは一切関係ございません
※キヨさんの下の名前は「拓也」にさせていただいてますが、これも現実とは一切関係ないです
sideD
青い青い、空の下。
口から出るのは白い煙。
苦しいし、肺は汚染されていくのにどうしてもやめられない。というか、やめる気はない。
煙草はあいつにとって、俺の象徴のようなものだから。
あえて火を消さず煙を纏ったまま、目の前のインターホンを押す。
はぁい、と気の抜けた声が聞こえて、ドアが開かれる。
「どちら様、で………」
出てきた茶髪の男は俺を見て固まった。
「久しぶりだなあ拓也。お前ちょっと痩せたか?」
父さん、と掠れた声が耳に届く。
「なん、で…突然」
「おいおい父親に向かってそれはねぇだろ、とりあえず中入れろ」
怯えたように視線がゆらりと揺れる。
それを取り繕うかのように、妙に明るい声で拓哉は部屋に俺を招き入れた。
正真正銘、俺はこのゲーム実況者”キヨ”の父親だ。
ずっと前に離婚して親権はあっち側になったけど、まあ血は繋がっている。
離婚したのはいつだったか、こいつが14,5の時だった気がする。
嫁がこいつとあと一人息子を連れて出ていったときは流石に驚いた。
それと同時に、頭の悪さに笑いそうになった。
出ていけば俺から逃げられると思ってることに。
馬鹿だな、もう逃げられないやつがひとりいるんだよ。
なあ、拓也?
「……ごめん、急だったからなんも用意できてない」
「ん?あぁ別に気にしねぇよ」
カップにそそがれたお茶が俺の前に置かれる。
綾鷹が好きなのは俺似だ。
おい、と声をかけると拓也がびくりと動きをとめた。
「そんなに俺がこわいか?久しぶりの父親との再会だぜ?」
「あ、いやそういうわけじゃ…!父さんが俺を愛してくれてるのも知って」
「俺?」
「…っ!ぼ、僕…っ!」
胸のうちにどろりとしたものが広がって、どうしようなく腹立つ。
それを隠して笑顔を作り、こっちに来るよう手招きをする。
不安そうにおずおずと、拓也が俺の側に来た。
怯えたような瞳は小さい頃から何も変わっておらず、母親似て、愛おしい。
「……とうさん」
「拓也、俺はお前のことを愛してるんだ。それは分かるだろ?」
いつものように耳元で囁く。
愛してる、の言葉だけでこいつはもう俺に刃向かえない。
……小さい頃からずっと教えこんできた。
兄の方とは違って聞き分けが良くて、何より母親にそっくりだったから。
俺が癇癪をおこして殴る度に怯えた目で見てくるその顔が、大好きだった。
初めて手を出したのは多分こいつが小5の時。
喚きもせずにただただ涙を流す拓也を無理やり。
そして体に、脳に染み込ませた。
『これは愛だ』
『お前を愛しているからこそ、殴ったり、犯したりするんだ』
『その愛を拒むのか』
『お前をこんなにも、愛しているのに』
それからこいつは、従順な俺の奴隷になった。
「俺はお前を愛しているのに、お前はこんな…反抗的な態度ばっかとって」
「ごめん、なさ…い、僕そんなつもりじゃ」
「言い訳か?」
怯えたような瞳で見つめてくるこいつの頬に手を当てる。
昔から、加虐心を煽るのはとびきり上手だった。
意図的にしてるとも思えないし、天性の才能なのだろう。
「悪い子にはお仕置き、分かるよな」
己の感情に身を任せ、俺は大きく右腕を振りかぶった。
───────────────────────
物の少ない部屋に飾ってある”level”ごとの写真。
1番大きいものは今年の2月に行われたものだろうか。
親しげに腕を組む写真が目に入り、唐突な不安に襲われる。
いつか、こいつも俺の手の届かない場所に行ってしまうのではないか。
俺からではなく、別の人からの愛を求めるのではないか。
それを誤魔化す為に大きく舌打ちをすると、隣にいる拓也がびくりと背中を跳ねさせた。
「…いい眺めだな、お前は格好いい衣装よりこっちが似合ってるぜ」
視界を奪われ、手足を拘束され、破られた服からは無数の痣が覗く、そんな可哀想な格好。
気まぐれに優しく頭を撫でてやると、弱々しい笑みがかえってくる。
飴と鞭さえ上手く使うことができれば人を堕とす事なんて簡単だ。
俺に依存させ、俺無しでは生きていけない身体にする。
愛を受け取ることは呼吸をすることに等しい。
愛は空気、酸素。俺がいないとまともに息すらすることができない、それがこいつ。
「…それに漬け込んで、蝿共がうるせえな」
首をきつく絞めた痕、これは多分ヒラとかいう奴の仕業だ。
拓也が人目を惹く容姿で、人気があることぐらい俺が1番分かってる。
近づいてきた奴らの中でもあいつは異質だった。
いつも無機質な目で拓也を見つめている。
…何をするか分かったもんじゃねえ。
「拓也、お前昨日誰かとヤったろ」
「…っ!………ゃ、やってな…」
あいつを庇うような態度も気に入らない。
拓也を俺から離すことなんてできるはずがないのに、何故こんなにも不安に駆られる?
…まあいい。
仮にあいつに奪われたとして、その時は力ずくで取り返すまで。
それが俺の愛情だ。
俺の愛から、あいつは逃げられない。
──────────────────────
sideDどうでしたでしょうか…?
Dとは父親(Dad)の事です、父親視点はじめてだったのですごい時間かかっちゃいました
すごい駄作になる予感しかしてませんでしたが、やっぱり予想どおり。
ここまで読んでくれた皆様にほんと感謝でございます…
過呼吸シリーズはまだまだ終わりません!あと5?パートぐらい?かな?
曼珠沙華以来の長編。
リクエストくれた方を飽きさせてしまってるんじゃないかなー、と心配しながら書いてます
次はーsideB!
どうか最後までお付き合いくださいませ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
63 / 79