アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
狂気の裏側(rt←ky)
-
※実況者になってない世界線のkyさんのお話
※kyさん大学東京設定。
※kyさんはrtさんのファン、言わずもがなrtさんは実況者
※ヤンデレストーカー系苦手な方にはおすすめしないお話です
────キヨ視点────
『はーいこんちゃーす、レトルトと申します!』
大学の帰り道、俺が乗った電車では数名の女子高校生がきゃらきゃら笑いながら話をしていた。
雑音をかき消すためにヘッドホンを耳にあてる。
いつものように彼の鼻につく声が聞こえた。
『今回やってくゲームはこちら!前回と同じ作者さんのなんですけど…』
ゲーム実況者『レトルト』さん。
4、5年ほど前に活動をはじめた人で、俺がゲーム実況を見るきっかけにもなった人だ。
特徴のある声と優しい喋り方で、女性のみならず男性にも人気があり、ファンからは「れとさん」の愛称で親しまれる。
勿論俺もそのファンの1人だ。
ヴヴ、とマナーモードにしてあるスマホが震え、画面の上からTwitterの通知を知らせるバーナーがひょっこり顔をだす。
ちらりと見えたレトルトの文字を見逃さずTwitterをひらくと、やっぱりれとさんの通知だった。
動画がサイトに投稿されたことを知らせるツイートの後ろにちょっとした近況報告が書かれる。
いいねとリツイート、コメントをした後に動画の続きをと思い、Twitterを閉じた。
俺が彼の存在を知ったのはいつだったか。
元々ゲーム実況というジャンルは好きで、良く見る方ではあった。
他の実況者も好きだったし、その時はれとさんだけが特別なことはなかった。
決定的に他と差がついたのは、あの日だろう。
友人の付き添いで行ったコミックマーケット。
たまたま俺の前にれとさんのブースがあって、彼は自分のグッズを手売りしていたんだ。
ひとりひとりに丁寧に「いつも見てくれてありがとうございます」「これからもよろしくお願いします」と目を見て言っていた。
きらきらしてて、あの時の俺には眩しすぎるぐらいだった。
それから、れとさんにしか目がいかなくなった。
今思えばあれは一目惚れに近いものだったのかもしれない。
実況を見て、グッズを買って、動画やツイートにコメントなどを返して。
「れとさんの隣にいられたら」そんなことを考えるようになっていた。
あまりにも現実的ではない自分の望みに、思わずため息がでる。
ただの憧れなのか、好意なのか、もしかすると恋愛感情なのかもしれないこの気持ちは、
存在していてもいい感情なのだろうか。
電車内のアナウンスが俺の降りる駅を告げ、ドアが開かれる。
先程までドアの近くを陣取っていた女子高校生達はもういなくなっていて、あの騒がしい笑い声も聞こえない。
歩きながら動画を見るわけにもいかず、耳に流す音を実況から音楽に変えた。
電車を降りて出された課題の事を考えつつ改札口へ向かう。
大学のレポートの期限はいつまでだったっけ、確か2日後ぐらいだっけ。
今日やるべきか、いやでも実況途中まで見ちゃったしなあ。
そういえば今日の夜に生放送するって言ってた気もする。じゃあレポートは明日だな。
ふと我にかえり、自分の生活の大部分をれとさんが占めていることに気がついた。
俺だけじゃない、世の中のオタクは皆そうなのだろう。
生活の半分以上を推しが占める、それが幸せなのだ。
────────────────────
家路に着く頃にはもう夕方になっていて、途中家へ帰るのだろう子供たちとすれ違った。
俺も小さい頃は友達と遅くまでサッカーをしていたっけ。
そんなことを思い出しながらマンションのドアを開く。
ただいま、と呟いても一人暮らしの俺には返事をしてくれる相手なんているはずもなく、
冷たい玄関に呟きは吸い込まれた。
「生放送は何時だ?…20時ー…まだ時間あんな。」
Twitterで確認しながら鞄を置き、飲み物を取りにキッチンに向かう。
「軽く飯食っとくか…?んーー…」
誰か飯作ってくれるパートナーでもいたらいいのに。
ちらりと頭によぎって、ふと、考えてしまった。
「………いんのかなー、カノジョ」
いてもおかしくはないだろう、だってあんな素敵な人なのだから。
今のところそんな噂は聞いた事もない。
けれどいつか結婚しないといけなくなる。
はあ、とまたため息が漏れた。
部屋の至る所に置かれたグッズの数々、俺が今までしてきたコメントやリツイートの数。
どれだけ動画を見ても、グッズを買っても、コメントやリツイートをしても。
俺は“大勢のファン”の内の1人で、決してれとさんに認知されることはないんだ。
「……こんっなに好きなのに」
可笑しいのかな、男性を、しかも直接関わりのない動画投稿者を好きになってしまうなんて。
「俺、誰よりもれとさんが好きな自信あるよ?」
だけど、絶対に
俺の声は届かない。
どんなにお金を積んでも、あの人の耳には届くことは無い。
「…ならさ、もういっその事、」
壊れてしまおうか。
────────────────────
そう決めてから随分気が楽になった。
まずは直接会いにいくことから始めよう。
Twitterにあげられていた写真の背景、今までの動画のトーク内容全部を参考に、住んでいる場所、住所を特定して。
本名生年月日、出身校も全部知りたい。
個人の電話番号も調べるべきだよね、
夢中になって調べた。
れとさんについて、調べたことを全部ファイルにまとめて。
これを大学のレポートで出そうとも考えたけれど、流石にやめた。
俺以外に教えたりするものか。
住所を調べてから、色んな物を送った。
まずのど飴、お菓子とか、あと香水とか。
ファンレターを送ったりもした。
だんだん精神的に弱っていているのだろう、れとさんは生放送をしなくなり、動画の投稿頻度もガクンとおちた。
…嬉しかった。
俺の存在がれとさんに影響を与えているということがとてつもなく嬉しかった。
……ああそうだ、せっかく住所を調べたんだ。
れとさんに会いに行こう。
──────────────────
調べた住所は俺の住んでいるところから駅2つ分離れたところにあった。
大学に通う際いつも通り過ぎていた駅で、こんなにも近くに居たのだと感動した。
思い立って家を出ると生憎の雨。
せっかくセットした髪の毛が崩れる前に、早く会いに行きたいものだ。
早く早く、と急かす気持ちを抑え、電車に乗り込み、最寄りの駅でおりる。
れとさんはいつもこの駅を使って外へ出かけたりしているのだろうか。
もしかしたらコミケのあの時も、ここを使っていたのかも。
あの時より前に彼の存在に気づいていなかった自分が恨めしい。
駅の改札を抜け、地図アプリを開いてメモしてあった住所を入力する。
れとさんの住んでいる場所はここから10分程歩いた場所にあるマンションだった。
普段なら10分なんて気にならないけれど、なんせ今日は事情が異なる。
急ぎ足でそこに向かいつつ、そのほんの手前にコンビニがある事に気がついた。
そうだ、あそこで髪をセットし直していくか。
湿気で髪がぴこぴこ跳ねてしまっているかっこ悪い姿なんて見せるわけにはいかない。
うるさかった雨の音も、自分の心臓の音に掻き消されてもう聞こえなかった。
コンビニにつき、俺は傘を閉じて店の中へ入ろうとする。
その時、会計を終わって出ようとしていた男性と目が合った。
「え、」
どきりと心臓が跳ねる。
肩にかかりそうな線の細い茶髪も、マスクから覗く瞳も、ずっと憧れていたあの人のものだった。
ドアの傍で立ち尽くす俺をれとさんが訝しげに見上げる。
「……やっと会えた…!」
「は?…ぅわ、ちょっと!?」
本当に存在するんだ、と言うのが最初に思ったことで、
気がついたら手が伸び、彼を抱きしめていた。
「れとさん、れとさんだ…!」
「な、やめ…!」
胸のあたりが強く押され、れとさんに突き飛ばされたことに気づく。
鋭い視線を俺に向けたあと、彼はため息をついて俺をコンビニの外へ連れ出した。
すぐ近くにあった公園のベンチまで連れて行かれ、ようやく腕が解放される。
「……………あんまり大きな声で連呼すんのやめてくれる、おれも身バレ怖いんよね。」
雨が少しかかり、茶髪の先から雫が垂れる。
れとさんが目の前に立っていて、俺に話しかけていて。
れとさんの視界に俺が映ってると言うことがどうしようもなく嬉しい。
「えっと…ファンの方?よな。たまたまここに?」
「はい!あの、動画楽しく見させてもらってます…!」
「あはは、嬉しいなぁ。最近色々あって投稿遅れててほんまごめんね、」
恥ずかしそうに足元を見つめながられとさんが笑う。
ああ、なんて綺麗な笑顔なのだろう。
出来ればしたなんて向かず、俺の方を向いて俺に笑いかけて欲しいものだ。
「………れとさん、好きです」
「へ?ありがと…?」
れとさんの腕を掴む。
ひくりと彼の頬が引きつった。
「ファンじゃ好きになっちゃダメですか、女の子じゃないと付き合えませんか、俺はれとさんが好きです、めっちゃ好きなんです!!」
「おれ、を…?」
何を察したのか、れとさんの声が少し震えている。
そんなに怖がることなんかないのに、
「だから住所も調べました、本名も、血液型も、電話番号も、出身校も経歴も全部知ってます!気持ちもいっぱいいっぱい伝えました、沢山送り物も送ったじゃないですか…」
「………変なもん送りつけてきたん、君やったの」
「変なもの…ごめんなさい、一生懸命選んだつもりだったんですけど…」
握っていた手が振り払われる。
俺から遠ざかるように1歩2歩後ろに後ずさりするれとさんは、怯えた表情をしていた。
「…なん、で………」
「なんで、って、…嬉しいよ、こんなおれの動画みてくれて、好きにもなってくれて。でもそれは限度があるやろ…」
「え」
限度?
れとさんが好きだから、大好きだからここまで辿り着いて、ようやく会えたと思ったのに。
れとさんのこと沢山考えて贈り物送ったのに。
「ここまで来ると、おれは怖い…」
…ああそうか
ファンだから、俺が男で可愛い女の子にはなれないから
受け入れて貰えない。
ここまで来ても、直接会っても、声は届かない。
「……れとさん、れとるとさん。」
恐る恐るといった様子でれとさんと視線がかち合う。
「大好きです、多分れとさんを世界で1番好きなのは俺だと思います。
……俺のこと嫌いになりましたか、?」
「…嫌い、とかじゃ」
「……あはは、俺が悪いのでれとさんは気遣わなくてもいいんですよ。ファンの癖に可愛い女の子でもない癖に、れとさんの隣にいたいなんて考えちゃったから」
あれ、おかしいな
なんで声が震えてるんだよ
最初からわかってたことじゃないか
「…れとさんが俺の世界の全てなんです。れとさんに嫌われるぐらいなら、俺は……」
死んだ方がマシだ。
俺の鞄からだされた小ぶりのナイフを見て、れとさんが凍りつく。
「…そ、それ…」
「安心してください、俺にれとさんを殺せるわけない……これは、俺用です」
「……あかんよ、なんでそこまで…!」
首に刃の部分をあて、目をつぶる。
いつの間にか雨はやんでいて、雲の隙間に虹もかかっていた。
「…迷惑かけてたみたいでごめんなさい…ただ、れとさんを好きになっちゃっただけで」
ひんやりとするナイフを首に押し付け、そのまま横に素早くスライドした。
「やめろ!!!!」
赤い雫が飛び散る中で、俺に駆け寄るれとさんの姿が見えた。
あんな必死な顔、初めて見た
その瞳に映ってるのは俺で、なんて
こんな状況下でも考えてしまう俺は病気なのかもしれない。
俺に手を伸ばすれとさんに微笑む。
来世は、あなたと一緒がいいなあ
end
────────────────────
こんにちはー…
Twitterで告知していたにも関わらずこんなに更新が遅れたのは、1回データが全て消えたからです。
更新したはずなのに更新されておらず、
前もこんなんあったなぁとか思いながらアプリを再起動してみるとデータが全消えしているという。
なかなか精神的に辛い。
一発目はいい感じにかけてたんですけど、書き直しで何が何だかわからなくなっちゃって。
最後らへん酷いかも知れません…
今回は害悪ファンの方々【?】ってこんなこと考えてそうだなーって思いながらかきました。
絶対ダメですよ、本人に迷惑をかける行為は慎みましょう。
私が言うのもなんですが。
絶っったいダメです。
最初happyとまでは行かなくてもGoodENDぐらいにはしたかったんですけど、ね…
どうしてもBADENDに持っていきたい持病が…
まあ毎度ながらよくわかんない作品でした
最後まで読んでいただきありがとうございますー
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
69 / 79