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おまけ(side-T)
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俺には好きな子がいる。
その子は誰にも知られずひっそりと咲く花のように、健気で、儚くて、愛おしい。
「ストレッチするから自由にペアを作ってー」
教師のその呼び掛けに、困ったように視線をうろつかせるあの子。生徒同士が声をかけあって2人組になっていく中で、とうとう最後まで1人残されてしまったようだ。それも当然、あの子に仲がいい友達なんていないのだから。
本当は俺がペアになってあげたいけど、人気者がそんなことすると目立っちゃうからな。馬鹿共にあの子の良さを知られるなんてごめんだ。
教師の元へととぼとぼ歩いていく背中を見つめて、思わず口元が緩む。きっと今は大きな瞳いっぱいに涙を浮かべているんだろう。
可愛い可愛い俺だけの雅也。
可哀想な俺だけの雅也。
まさか自分がクラスに馴染めないのは俺のせいだなんて、きっと思ってもいない。
雅也は少しテンポがずれている。
ゆったりとしたペースで行動する雅也に、俺は自分の立場を利用して鈍臭い、足でまとい、面倒臭いというイメージをクラス中に植え付けた。
もちろん俺自身はそんなこと1度も思ったことは無い。
いつも一生懸命で、努力家で、雅也は誰よりも魅力的だ。
雅也が誰にも取られないように、自分だけのことを意識するように気紛れに優しい言葉をかけたり、どうでもいいクラスメイトと目の前でイチャついて見せたりした。
効果はあったようで、そのうちに雅也は俺が挨拶すると嬉しそうに頬を染めるようになった。校舎裏のアレも成功。俺のことを意識するようになったでしょう?
そのまま、大事に大事に隠し通して卒業して、大人になって。進路は別れたけどその間も勿論雅也を見ていた。いつか確実に雅也を手に入れられるように環境を整えて、会いに行くために。
外資系企業に就職し、落ち着いてきた頃を見計らって俺は雅也に接触した。
再会した時に舞い上がってつい出来心でやってしまった冗談が、何やら誤解を招いてややこしいことになった時はどうしようかと思ったが、お陰で雅也の気持ちも聞けたし結果オーライだ。
まさか雅也の口から「好き」が聞けるなんて。
やっと手に入れたんだ。もう逃がしてなんかやらない。
嗚呼だめだ。口元が緩むのを抑えられない。
雅也は嘘をついてごめんなさい、なんて言って可愛い瞳を濡らすけれど、本当の嘘つきは一体どっちだろうね。
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