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act.1
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「ま、まさ……さん?」
「……ま……よ……」
「だ、大丈夫……ですか?目が、異様に、光っ……ひぃ!」
一歩引いたところではあるが、それでも正義に対しての忠誠心を失うことのないフクロは、聞き取れない独り言を続ける姿を心配と不気味さによる恐怖が入り混じりながらもしっかりと伺っていると、正義は突然大きな音を立てて立ち上がった。
「よく聴け我が僕よ。この世界はもうどうにもならん、そして天満を許すこともならん」
その声はいつもの穏やかな口調ではなく、はっきりと強く、そして華々しく凛とした通ったものでフクロは驚きと困惑で瞳をまん丸く見開いたまま言葉が出ず固まったまま。周囲の生命たちも一瞬にしてその声に惹きこまれて、先ほどまで喧騒にまみれていた場は静寂を保った。
「あるべき刻は当に過ぎ去った。このままではならん、そこでだ。とある有力な情報を得た。これは全てを改革する術だ、その術を我が腕である正義に託す。よいか、お前は星を集めろ。星だ、天満が落とした星ではないから注意するがよい。その星、以前我らに仕えたものが所有しているらしい、その姿形は知らん、自力で調べろ。その星を13個集めて天界へ持って来い、出来ねばお前の命を奪う前に世界が崩壊するだろう。心して掛かれ……最後に、お前の呑気な動きで天満に先を越されてみろ、どうなるかは身を持ってして理解できるな?さっさと行くがよい」
高圧的な喋り方はどうにも正義のものとは思えず、その内容は明らかに天道だということがその場に居た誰もが理解できて皆息を飲んだ。
ひとしきり演説の如く声を張り上げた正義は、言い終えるとその場に倒れた。
「まささん……!大丈夫ですか?気持ち悪くないですか?意識はありますか?」
「……どこまで奔放なんだ……あの方は……」
「の、乗り移ったとか、そういうやつですか?」
「一時的に乗っ取られた……ん、だろう……っ」
「いきなり起きない方が!」
フクロの腕の中で苦しそうに眉を潜める正義の瞳は綺麗な桜色に戻っていた。そして、半身を起こした正義の視線は何処か腹を括ったような力強い色を宿していて、フクロは胸が鳴ったのを感じて息を飲んだ。
「……行かなくちゃならない」
フクロの腕を退けて立ち上がり酒場を出ていこうとする正義を誰もが声を掛けられずにいた。誰が見ても、全てを彼に押し付け過ぎだと感じていたからだろう。店のものは勘定を断り、ただ一言。“いってらっしゃい”と正義に送った。
それは、正義が天界に向かう時よりも温かい声色だった。
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