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act.2
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音の良く響く洞窟の様な空間。それが、此処ポーテアオ界である。
全体的に暗く、視界を鈍くさせ、周囲を照らすものは頭上を飛び回る小さな光虫。気温は常に涼しさを身に纏い外壁に覆われているため天気は関係なく、ゴツゴツした岩から差し込む光で朝と夜の知らせを得ている。此処、ポーテアオ界は光虫と牛たちの共存した、そんな穏やかな界域だった。
且つては光虫が大量に飛び周り、それはもう目に痛いほど眩しかった。水が池に落ちれば、音の反響と共に光虫が大量にそこから溢れ出す。その光景が神秘的で、名所とも名高い界域が……今はどうだろうか。
元より闇深い視界がより暗さを増し、今でこそはもう、自ら光を放つものがなければ歩く事すら危ういのだ。
「これは……?どうしてしまったと言うんだ」
目を細めて必死に凝らす正義の視界には、僅かな光虫しか見えない。光虫が外壁にぶつかりカラコロと独特の音を奏でるのも、僅かに聞こえるか聞こえないか……それはもう定かではないレベルで、正義は耳に手を当て生命の鼓動を得ようとするが、それも叶わない。
暫く探索することにした正義は、まるで人気のない薄暗い空間を進む。外壁に手を添えて、ゆっくりと、ゆくりと。
足が進むたびに周囲に響くパキペキという音は、正義の心に不穏を生み出す。これがまさか此処に生存するものであったならばどうしたら良いのか、その術を教えてくれるものは誰もいなかった。
―――どのくらい歩いただろうか、数時間、もしかしたら1日費やしているかもしれない。気温のせいか歩き続けているのに不思議と汗はなく、この界域へ入る前の水分は全て失われていた。不思議と寒さも喉の渇きも感じない、それがポーテアオ界域の謎めいたところである。
立ち止まり服を引っ張って手触りで確認を取ろうとしたその時だった。
カランコロン、カランコロン……
遠くで響く鼓膜に痛い音を聞き取って、はっと視線を上げた正義。それと同時に、この状況下の不安とその音への希望に目を強く見開いて走り出す。途中、何かに蹴躓いても気が競り、それまでの疲れを身体が訴えかけても脳内にまで届くことはなかった。
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