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act.2
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「優!優はいるのか!」
お腹から声を張り上げた正義の声が空間内で響き木霊する。すると、徐々に近づいていて耳が痛すぎるほどに大きくなっていたカランコロンという音が鳴りやむ。音が鳴っていた方を息を荒げて見上げると、先ほどまで居なかった光虫がゆっくりとひとつの場所に集まり出していた。
両掌では有り余る大きさの一塊になった光虫が照らし出したのは、褐色の肌のすらりと長身な青年。肌より明るい茶色の髪はゆるいウェーブで散らされ、その隙間から覗く右目の黒目と左目の琥珀色の瞳が怪しげに揺れている。
「その声は……正義……?」
おっとりとした口調でそう問いかけ、掌の上の光虫を声の聞こえた方へと青年が手向けると、光虫はゆっくりと正義の元へと飛び出す。
あっという間に光虫に全身を纏われた正義は、自らが神々しく輝くことを腕を上げたりして確認をする。光虫を操ることができるのは、この世界で正義は他に知らない。
「ああ……正義……生きていたんだね……良かった……」
ぶわりと光虫が頭上へ飛び広がる。いつの間にか目の前にいた青年が、正義に抱き付いたからである。
力一杯に抱きしめ、再開を懐かしむのはこの二人が親しい関係にあったことを証明するかのようで、事実、青年は正義の肩を涙で濡らしていた。
「優、この界域はどうなってしまった。これも、天道と天満の影響なのか」
優(ゆう)という名を持つ青年の背をあやす様撫で、柔らかなトーンながらも真剣な面持ちで質問を投げかける正義の心は重い。それはきっと、相手の気持ちが痛いほどに理解できるからであろう。
「……うん……僕たちが地上に落とされたあの日、偶然にも僕は自分の界域の近くに落ちることが出来たんだ。その日は何も変わりなかったし、みんなも牛の姿だった……でも、翌日……朝が来なかったんだ。天道様が……きっとお気紛れになられたのだと思う……そうしたら、光虫が激減して……元より光を得られない僕たちにとって、光虫がいないことなんて……みんな……混乱してしまって……」
正義の胸に額をあてて苦しげに語る優。その内容はやはり想像していたものと大差なく、その先の言葉に正義は身震いを覚えた。
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