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act.2
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「俺は……正直どうしたらいいのかわからずにいる」
正義は御座へ視線を落とす。水底で空気の泡を身に纏い眠る生命たちをそこから引き揚げて再び笑顔で暮らせるようにする術など、正義は持ち合わせていなかった。それ故に、迷いを口にした正義を優は目を細めて見つめていた。
その瞳は、切なる思いで訴えかけていたものを忘れさせるほどに穏やかで、慈悲に満ちていた。優は幼い頃からこうして正義を見つめていた。
空になったカップの底には、光の粒が儚げに光り、それに引き寄せられるように光虫たちが集まる。
カップにぶつかるたびに、カラコロと不思議な音が壁に反射されて響く。
「正義、それでも何かしようと此処まで会いに来てくれたのでしょう?じゃあ、僕と一緒に行こう。ふたりなら見つかるよ、答えも平穏も……ね」
集まってきた光虫たちと遊ぶように指先で光で線を描く優。優の口から出たのは、本当は正義が優に言いたかったであろう言葉で、代弁されてしまった正義はしてやられたと頬を掻く。
大切なモノたちが眠るこの場から優を連れて出ることに事実、正義は迷っていたのだ。
それすらも読み取った優の心境とは如何なるものか、誰にもわからなかったが、この瞬間……正義と優は幼子の頃の様に顔を見合わせてにやりと笑み、堅い握手を交わした。
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