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2-1 教室にて
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腕時計を確認しながら廊下に出る。
特別棟四階は空き教室ばかりで人気が無い。
二年の教室は階段を降りて渡り廊下の先。
まだ三分あるし余裕だな。
俺が学校で唯一気が抜けるのが、このトイレで過ごすぼっち飯タイムだ。
そこを一歩出ると、『戦士KAZ』でも『田中 和』でもない『高校のカズ』になる。
「よーしっ、なんとか間に合ったなっ」
教室に入ると次々声を掛けられるのはいつものことだ。
「うぇ〜ぃ、おせぇよ、カズ。
また『ラーメン王子はいらっしゃいますか』って来てたぞぉ」
「いやぁ、相変わらずモテますなぁ」
「今日はどこに呼び出されてたんだよ」
好意混じりのヤジに、「ラーメン食いに来てって言ってくれたぁ?」と笑って返し席に着く。
二年の4月に転校してきたときからのこの手のやり取りには慣れた。
父親の趣味が講じ、「仕事を辞めてラーメン屋を始めるぞ」と言い出したのは二年前。
経営コンサルタントの母親が、父親と一緒にテナント候補地、設備や材料の購入先まで全てを見て回り、辿り着いたのがこの高校の最寄り駅前にある商店街の一角。
『ラーメン TANAKA』のオープンに合わせ、二年の春に引っ越してきた。
そして、そこから俺の人生は大きく変わった。
片田舎の隅っこでジミメンとして暮らしていたのに、母親から「味は良くても、まず食べて貰えないとその良さはわからないでしょう?そのための協力、家族としてお願いできるわよね?」と圧をかけられ・・・直前の春休みに妹と一緒に接客を叩き込まれた。
母親似の妹は、仕方なく協力する俺と違って最初から前向きだった。
「あのさ、ココにはお兄ちゃんがゲムオタだってこと知ってる人はいないんだし、お父さんのラーメン屋を成功させるために努力すべきよ。元は悪くないんだから、磨いて集客アップに繋げなきゃっ」とか言ってきて、ジミメン改造計画まで持ち込んできた。
おかげで、今まで近所の床屋でお任せカット一筋だったのに、わざわざカリスマ美容師で有名な美容室まで行かされた。
この高校を選んだのだって、校則が緩く、髪を染めても許されるところだったからだ。
店の外でも人目を気にしろと、私服のワゴン品禁止に家以外での姿勢や言動まで注文をつけられ、父親の方が「そこまでしなくても・・・」と申し訳なさそうにしていたけど。
「「やるからには、てっぺん目指しなさいっっ」」
我が家のルールは、母と妹に逆らわない。
唯一の救いは、服や美容の必要経費込みだとバイト代が弾まれ、余った分を課金に突っ込めることだ。
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