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プロローグ
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肌に触れる生温い空気が気持ち悪い。
汗のせいで肌にTシャツがこべりついて余計に気持ちが悪い。
ミンミンと大きな声で叫んでいる蝉の声が余計に暑さを強調しているようでさらに気持ちが悪い。
今年は昨年よりさらに暑くなっている気がする。
そう思い始めたら、なんだかさらにイライラしてきた。
たった今、自分の描いている漫画の締め切りが変更になり、あと5日で仕上げてくれと連絡があった。
締め切りはまだ先だったはずだし、急に変更されても困る。
イライラした俺は意味もなく家を飛び出し、こうして暑い中外を歩いているのだ。
エアコンが普及しどの建物に入っても涼しい時代に、わざわざ外に出るなんて、自分はとんだ馬鹿だと思う。
公園の水辺で遊ぶ子供達を横目に、屋根が着いた小さな休憩場のベンチに腰かけ、目を瞑り自分だけの世界へ落ちていく。
視界を遮ると音も消える。
先程まで大きな声で叫んでいた蝉たちの声が薄れていき、水辺で遊んでいる子供たちの声も段々と聞こえなくなった。
聞こえるのは自分の呼吸の音だけ。
音が消えると、自分の中に眠るあらゆる可能性が頭の中に広がる。
漫画を書く上で、自分にとっては必要で大切な時間だ。
普段思いつかないようなアイデアや発想が生まれるからだ。
だから、行き詰まったときやむしゃくしゃした時はこうしてこの公園のベンチで自分と向き合いに来るのだ。
そうだ、あの日もこんな風に俺がむしゃくしゃしていて、このベンチで瞑想してたんだ。
俺が初めてあいつに出会った日。
俺が初めて恋を知った日。
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