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いつも通りの朝。いつも通りのオフィス街。
僕はとある会社で働くただのサラリーマンだ。いつでも俯いて、本心を悟られまいと苦心しているただの小心者。頼まれた仕事は絶対に断らないし(と言うより断れない)、押し付けられてるって分かってても、頭を縦に振る。
できるだけ誰かを怒らせないように、ビクビクしながら生きている。
僕は、誰かを怒らせることが何よりも怖かった。
またあの時みたいになるんじゃないかって……
「西尾くん!ほんっと申し訳ないけどさ、この資料のコピーとこれのバックアップ頼めない?」
隣のデスクの女が僕に両手を合わせる。そこには大量の資料やらなんやらがドンと積まれていた。
「私ね、どうしても今すぐ帰らなきゃいけないのよ。お父さんが、お父さんが倒れて!」
「それは大変ですね。もちろんいいですよ。僕がやっときますから、早く帰ってください」
眉を下げて、さも心配そうに答えた。
あぁ、残業決定だ。
ありがとね、と女は笑いながら行ってしまった。僕は知っている。彼女の父親なんて倒れていないことを。
彼女は今日友人と食事に行くようだった。休憩室で話しているのを僕はたまたま耳にした。そのために早く帰りたかったに違いない。
別に今更腹が立つことなんてない。僕が色々な人に便利なように利用されてるのは知ってたし。
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