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そして現在に至る。
「よぉ、奏」
「なんで……っ」
僕は黙って彼の家を出て行ったし、家なんてもちろん知らせてない。なのにどうして。
「なんで家が分かったかって聞きてぇんだろ?あぁ、そりゃもう苦労したぜ。一年もかかっちまったからな」
彼の軽い物言いの影に、微量の怒気が含まれていることに僕は気付いた。
「質問に答えろ、なぜ俺から逃げた?」
獲物を狩る時のような、相手に恐怖心を抱かせるような目で、僕を捉えた。
僕はこの目が嫌だった。まるで心の底まで見透かされているような気がして、逃げ場が無くなるような感覚に陥るからだ。
「や……あの…それ、は……」
口が上手く動かせない。手の震えは酷くなっていく。少しでも紛らわせようと強く拳を握るが、効果はない。
「まぁ、こんなとこで立ち話もあれだし、部屋にあがろうぜ」
そう言って彼は僕の部屋の扉を指さした。
彼の声は怖い。無意識に人を従わせる。それが世界の道理か何かのように、矛盾がない。人の上に立つために生まれてきたみたいだ。
僕は彼にそう言われては、頷くしかなかった。
鍵を開けて、自ら彼を招き入れた。それが自分から喰われにいくような愚かな行為だとは理解していたけど、どう足掻いても従うしかなかった。
逆らえなかった。
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