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「あの…大丈夫ですか?」
朝ごはんを食べ始めて少し経ってから、音原くんが言った。
将平とのことだろう。
あの後僕は音原くんに抱きしめられながら、泣きじゃくった。子供みたいに声を上げて泣いた。
抱えきれないほどの自己嫌悪。きっとそのせいだ。
僕さえ居なければ。今まで何度そう思っただろう。将平が怖くなってしまったのだって、僕のせいに決まってる。
「大丈夫だよ」
でももう大丈夫。
将平にはなにも思わない。僕はこれから何も愛さずに生きていくんだ。寂しさなんてない。
「ごめんね、色々迷惑かけて。それでありがとう。僕はもうそろそろ帰るよ」
席を立とうとした時、
「あ、あの!」
音原くんに呼び止められた。
不思議に思って彼の顔を見ると、彼は何故か悲しげな顔をしていた。
「僕が、あなたのこと好きだって言ったら……どうします?」
「えっ」
驚いた。
音原くんが、僕のこと、好き……?
ありえない。僕はだって、音原くんにいいことなんて一つもしてない。
なんで僕なんかを好きになるの?
「ごめん…」
音原くんが嘘をつく人間だとは思えない。
音原くんがとっても良い人だってこともしってる。
でも僕は愛し愛されることが怖い。
「でも僕、諦めませんから。いつか必ず、奏さんを幸せにしますから」
「…っ」
言葉に詰まった。
僕みたいなのが幸せになっていいはずないんだ。音原くんのような優しい人は、もっといい人と一緒になるべきなんだ。
「か、帰るね」
なんだかいたたまれなくなって、急ぎ足に音原くんの家を出た。
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