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将平side
「兄さん。裕子さんとは、上手くやっておられますか?」
俺の書斎に入ってきた弟がニタリと嫌な笑みを浮かべながら言った。
俺には6人の弟と2人の妹がいる。
9人兄弟姉妹だ。
コイツは次男の詠介(えいすけ)だ。俺より2歳年下で多恵子と言う名前の妻をもつ。野心家で裏表が激しい。隙あらば足元をすくってくる油断ならない奴。
「ああ」
「しかし兄さんは真面目ですね。愛人の1人や2人つくらないんですか?」
愛人だと……?
「馬鹿にしてるのか?」
そんなもん、いらないに決まってる。奏以外は誰もいらない。
俺はあいつ以外は愛せない。
「馬鹿にだなんて。滅相もないです。
……ただ、兄さんは昔、西尾奏という恋人をお持ちでしたでしょう?
俺も一度だけ見たことがあるのですが、綺麗な方でしたね。その方とはもうお付き合いなさっていないのですか?」
探るような鋭い目付きで尋ねる詠介。
こいつは親父に似ている。相手の反応を伺って、優位に立とうとする。
「西尾?……あぁ、確かにそんな奴もいたな。そいつとはとうの昔に終わらせたが?」
冷静に淡々と答える俺を見て、詠介は気に入らなさそうに口元を歪めた。
「そ、そうですか……」
大方俺が動揺するのを期待していたのだろう。
だがまんまと詠介の思惑通りに動くほど俺はピュアじゃない。
隙を見せることなど無論できない。それはつまり「没落」を意味するからだ。
本心など、口に出す必要は無い。
誰も彼も信じるに値しない。
信じられない。
嗚呼、やっぱり、奏に会いたい。
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