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花鳥風月の蝶1
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例えば、
花街の道端の隅に咲いている花を雑草ととるか、
四季を感じさせる美ととるか。
青空を自由に羽ばたく鳥を朝寝を邪魔する烏ととるか。
頬を撫でる風を世辞というのか俗言とするか。
夜の闇を照らす月を明るすぎると嘆くか、愛でるのか。
知識が無ければ、ただ目の前からすぎていき、
知恵が無ければ、目にも止まらない。
知識や知恵は、誰にも奪われる事の無い財産。
成り上がりたいなら、貪欲に欲し、身につけ、学ぶのみ。
熱意を手放した瞬間、偽りの欲に飲み込まれ、あっとう間に土左衛門。
さもしい人間であろうと、貴い身の上であろうと、
権力という衣が剥がれれば、一蓮托生ただの人。
だから、人の形をしている今は教養が全ての財となる。
金貨も銀貨も、所詮は朽ちれば塵に返る。
腹も膨れず、肥やしにもならない。
醜猥な欲に左右されず、誰にも決して犯される事の無い身一つの財産。
これもすべて、前世での戒行が拙い故の苦界。
人であれば、まだどうにかしようがあるものだが、
人ですらなくなってしまった身の上で、蓮華上に担ぎ上げられた醜い骸。
髪が落ち、皮が剥がれ、肉さえ腐って朽ちたなら、
骸から目が落ち、めでたい。めでたい。
「ぽはぁッ」
布団の上に寝そべって、天井を仰ぎ、キセルで吸い込んだ煙を丸く吐く。
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