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苦界の蓮華10
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「…???」
なんだこれ…?
頭の中で、その瞳を見てはいけないと早鐘が鳴る。
どうしても目が離せない。
動く小さな唇は艶やかで、
温かな色の薄明かりに艶やかな肌が磁器のような肌に影を落している。
嘯くように聞こえるこえは、
陽炎が揺らめくように響いている。
決して大きな声ではない。
むしろ自分にだけ囁いているのに、
耳を通さず頭の中に直接届いているように鳴っている。
太夫が話す度に、綺麗な歯並びの歯と柔らかそうな舌が動く。
遠くにいたときは気にならなかった事が、
近くなって1つ1つが鮮明になる。
「俺は、破戒僧だ、しな…」
頭の中、身体、全てが遠く、そして近くに感じる。
「そう…」
太夫がふと視線を外し、宗純は体中が強ばっている事を知った。
何にそんなに緊張していたのだろう。
額にじんわりと汗をかいている。
身体が、息苦しさを感じて、急に呼吸を始める。
なんなんだ…
特別な事は何もしていないのに、
自らの感覚で身体を動かす事が出来ていない事に気づく。
これが、いわゆる傾城の手練手管なのだろうと思い知らされる。
あと一寸でも見つめられていたら、
恐らくは今ここで太夫を押し倒していたか、自らが窒息死してたと思う。
僧侶としてある程度修行を積んだ自分が、
ここまで翻弄される花魁がかつていただろうか。
最初は、噂に違わぬ器量の花魁くらいは思っていたが、
地獄という名前を名乗るだけあって、底なしの凄みを目の当たりにする。
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