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血のキス①
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カノに無理を押し通してエイドの了承をもらい、宝は独房に入ったというキルシュと会うと決めた。使い魔契約を破棄してもらいたいのもあるが、あの【さいてーのくずやろう】に言いたい事が山程ある。宝は気は弱い方だが、こうと決めたら貫く強い意思と忍耐力がある。割と行動的だった。病院から中央棟への廊下を歩きながら口走る。
「会ったらとりあえず一発殴ろう」
「キルシュさんを殴るんですか?」
「え、あ、はい、まぁ」
「うちの警備部最凶の狂犬を殴るとか笑う」
「ハハッ、瞬殺されそう」
「そういえば宝さんって、何歳ですか?」
「20歳だけど」
「え、そうなの!?じゃあ同い年だ、敬語なしでいいよな。宝って呼ばせてよ」
「え、カノさ・・・カノ君、てっきり年上かと思ってた」
「カノでいいよ。オレは逆に、宝って未成年かと思ってた」
よく間違われる。小柄で細身、顔は、まぁ普通に男にしか見えないと思うがイケメンではない。初めての酒場デビューで未成年と間違われ警察を呼ばれた事もある。
「キルシュさんって天剣でも古株の人でさ、ドSだし戦闘狂だしけっこう自分勝手なんだけど・・・自分のテリトリーには絶対入れないんだよね。だから宝を自宅に置いたり使い魔にしたりって何か特別なのかなって」
「どうだろう、遊ばれてる気もする」
「まぁそういうところあるな」
「しかも、無理矢理セッ・・・」
・・・クスは流石に思い出すと恥ずかしいのでやめた。
「ん?」
「なんでもない」
「?」
しばらくして中央棟に着き地下独房へつづくエレベータと案内される、カノは自分はここまでと中へは入らない。宝は正直不安だが意を決して最深部へのボタンを押す。扉が閉まる直前にカノは「今度遊ぼう」と、イケメン笑顔でピースしていた。
エレベーターは最深部へと到着しまるで地獄の門のように静かに扉を開く。一本道なのか意外と明るく照らされた道を真っ直ぐ進むと鉄の扉の前に着く。側の小部屋に看守なのか天剣の制服を着た黒髪で短髪の男が座っている。よく見ると緑と青のオッドアイの男前で、耳が少し尖っている。人間・・・じゃないかもしれない。
「あの、エイドさんって人は・・・」
看守らしき人は無言で扉を開けて顎を指す。入れと合図らしい。宝は軽くお辞儀して入る。中はドーム状の割と広い空間で、扉がいくつかある。その一つの扉の前に人が立っていた。白髪琥珀色の瞳の美少年だ。
「やぁ、初めまして、宝君。僕はエイド、天剣のリーダーみたいなものです」
差し出された右手で握手するが、左手に持つ鞭が気になる。血のような赤い液体がこびり付いている。
「君を保護するとお約束したのに、うちの駄犬がご迷惑おかけしてごめんね。躾け直しておいたので話をしたければどうぞ」
にっこり笑顔だが、宝の手足の先からはい寄ってくる寒気を感じる。怖くてまともにエイドと会話が出来ないが、背中を押されて独房の中へと促される。扉が閉まる直前にエイドはかすかな声で言った。
「フフッ、彼に喋る元気があるかな」
バタンッと冷たく扉が閉まると自動で灯りが灯され中央に鎖で拘束され、吊るされたぐったりしているキルシュが居た。床には血痕、キルシュ自身も体罰の跡が生々しく残っている。先程エイドが鞭を持っていたので相当打たれたのだろう。下を向いているので息をしているのかわからないが声をかけてみる。
「キルシュ、さん?」
返事はない。怖いが近付いて覗いてみる。
「あの、大丈夫・・・ですか」
まさか・・・死んだのだろうか・・・。宝はさんざん自分に無体な事した男だと忘れて、鼻と口に手を当てて呼吸を確認してみる。微かだが息をしている。
「よかった、生きてる」
なにがよかったのかはわからないが、安堵した。すると当てたままの手を突然噛まれた。あまりにも弱々しいので痛くはないが。
「・・ぐ、ふっ・・・はっ、はっ、」
「キルシュさん!」
「・・・はぁ・・・ッ、なんだブサイクか」
「うぐっ」
腫れた瞼は開けられないらしく声で宝だと判断したのか、第一声はキルシュらしく毒を含む。だがここで気負いしては何のためにがんばって来たかわからない。
「あの、俺、キルシュさんと使い魔っていう契約破棄して欲しいです」
「・・・イヤだ」
「ええっ!?」
キルシュは俯いて目を閉じたまま拒否する。宝は負けじと再度お願いする。
「あの、俺に、あんなっ、あんなことしたのは許しますから契約破棄してください!」
「・・あんなって、なに」
「だ、だから、その、せ、せっ」
「ハッキリ、いえ、よ・・・」
「うっ、せ、・・・・せ、セック・・・スす」
「ククッ、・・セックススって、なんだよ」
「そんなにボロボロなのに、元気ですね!!!」
覇気はないが悪態をつく元気はあるようだ。
「おまえは、元気・・・だな」
「なんか回復力が早いみたいなんで、好き勝手された尻も元気です」
「へぇ・・・」
「と、とにかく俺はもうお役ごめんなので要らないですよね」
「・・・キスしたら、破棄してやる」
「ええっ!?」
この男バカなのか?なんでボロボロの男と男同士でキスしないといけないのか、性の経験もない宝にとってはハードル高すぎる。女の子と手すら握った事ないのに、というか全部飛ばして男に突っ込まれ全部奪われたが。ちょっと抜けてる宝でも、この提案はさすがに嫌すぎる。
「嫌です!」
「・・・うっ、ゴホッゴホッ」
宝に拒絶されるとキルシュは咳き込みまた血反吐を吐く。床には新たな鮮血が散らばった。さすがに宝はビビる。本当に死ぬかもしれない。
「あの、無理してもダメです」
「・・宝」
「っ」
宝は名前を呼ばれてたじろぐ。これで目を合わせられたら多分終わる気がする。だがキルシュの目は閉じたままだ。
「ゴホッ・・宝、俺の血と・・肉と魂は、お前のもの、お前と契約している限り」
「何の話?」
「・・死んだら、お前に全部やるって・・はなし」
「い、いらない・・・」
「・・・じゃあ、しぬわ」
「ッ!」
じゃあ、しぬわ。なんで簡単に言うんだ、宝は誘拐されオークション会場での死の恐怖を知っている。だから簡単に言うキルシュがこのまま死ぬのは許せなかった。
「死ぬって言うな!俺と生きるって言ったのに!」
「・・・」
「あと!あと、言いたいこと山程あるんだ!人のケツさんざんにしたし!部屋を掃除しないし!タバコ吸いすぎだし!無駄遣い多いし!節約しろ、老後にそなえろ!無駄遣いするな!」
「・・・フッ、ハハッ」
「あと、・・・死ぬのはダメだ」
「じゃあ、・・宝から、ッ、キスしてくれたら、とりあえず生きるわ」
「なんでそこに戻るの・・・」
もうキルシュのペースに巻き込まれてる気もするが何言っても口では勝てない。キルシュには生きてもらって元気になったら話をつけるしかないと思い、キスする覚悟を決める。
キルシュの目は相変わらず閉じているがおそるおそる近付いて覗き込む。心なしかまた呼吸が弱くなっている気がする。
宝は目を瞑ってキルシュにそっとキスをして離れた。それはほんの一瞬触れるだけのキスだったが、僅かにキルシュは身体を震わす。腫れた目を開けようと必死なのか瞼が震えている。なんとか生きてるようだ。宝は目を開けて確認する。
「宝、もう・・少し」
キルシュは弱々しく強請る。あんなにドS全開だったキルシュからは想像もつかない姿だ。宝はさすがに良心が痛み望みを叶えてやる。またそっとキスしてみて今度はくっつけたままにしてみる。
サヨナラ、俺の何回目かのキスと思った矢先いきなり勢いよく唇に噛み付かれた。ジャラジャラと鎖の音が響く。強く舌を吸われて後ろに逃げる事も出来ない。器用に舌を離さず吸われたり、時折噛まれて宝は背中にゾクゾクと何かを感じた。
「ンッ、ふっ、ぁ、ふぁっ」
「ん、んっ、っん、っ」
血と唾液が混ざり合って気持ち悪いはずなのに離れられない。だんだん力が抜けてきて立っていられないのに舌は吸われたままなので、仕方なくキルシュの首に腕を回してしがみついた。これではまるで自ら求めている感じだ。下肢が熱を帯びてくる。
まずい、まずい、まずい!このままだと!
強烈なキスに反応し宝の下肢の熱が昂ぶる。明らかに欲情した。首に回した腕に力が篭もる。このままだと間違いなく、イク。
「ンッ、んんッ、ん、ふっ、んんんっ!」
「っ」
「んんんんんっ!ん、んんッ!んうっっー!!!」
宝は・・・・イッた。触りも触られもしないのに、キスだけで射精した。余韻でビクビクと身体が震える。キルシュは宝がイッたのを感じ、キスから開放してやる。はぁはぁと酸欠状態の宝は床にヘタる。
するとキルシュを拘束していた鎖がボロボロと崩れ始めて壊れた。支えを失ったキルシュはそのまま宝の上に倒れ込む。
「うわっ!キルシュさん、重いです」
「は、ぁ・・・宝、キスしたい」
「しない!もうしない!あんたが元気になったら話の続きしますからね!?ねえ、聞いてます!」
「・・聞いてない・・・」
キルシュはとうとう気絶したらしい。のしかかって重いキルシュをどかせられない宝は、そのまま倒れて天井を見つめているとエイドが覗き込んで来た。
「魔装具、壊したんだね」
「え、なんですか、まそうぐ?」
「あの鎖、キルシュが自分の魔力で作ったんだけど」
「ええっ」
「なにかな?僕がキルシュを拘束してたと思ったのかい?僕はSじゃないから、そんな事しないよ」
「だって鞭・・・」
「あぁ、アレは彼の趣味。キルシュはドSだけどドMな変態だから体罰なら鞭がいいって言うから」
「へんたいだ!!!!!」
ヨイショとエイドは宝に覆いかぶさるキルシュを足蹴りで退かす。エイドも普通にドSだと思う。開放された宝は立ち上がれずに四つん這いになってプルプルと震えている。
「キルシュは病院送りだね。君はとりあえずこの子の自宅で待機してなさい」
エイドはボロボロのキルシュをさっきのオッドアイ看守に出口まで運ばせて、宝をカノにキルシュの自宅まで送らせた。今夜一緒に泊まろうかと提案はされたが、大丈夫だとやんわり断る。他人を勝手に入れたら多分キルシュが怒ると思ったのだ。
カノが帰って一人になった玄関で糸が切れたように扉に背を預けて座り込む。身体が冷たい、手足も震えている。ゆすいできたが口の中でまだ血の味がする気がした。
「うっ・・・・ぅっ、ふっ・・・」
今までの疲れがどっと押し寄せ咽び泣く。とにかく部屋へ上がらないとと思うが力が入らずに立てない。薄暗い玄関で宝は震える。誘拐された時にずっと目隠しされていた恐怖で、暗闇が苦手なのだ。携帯もないので助けを呼ぶ事も出来ない。
「誰か・・・」
誰か・・・言葉に詰まる。脳裏によぎるのは身勝手で横暴なドSな男しか思い浮かばない。
「・・・ぁ、・・キルシュ・・さん」
ドンっ
名前を呼んだ時、外側からドアを叩く音がした。びっくりして息を潜める。
「宝」
身に覚えのある声が聞こえた・・・
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