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ストリートチルドレン①
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ピンポーン
早朝からキルシュの自宅のインターホンが鳴る。宝はまだ眠かったが人の事を抱き締めて寝ているキルシュが起きなそうなので、腕を解いて玄関まで急ぎドアを開けた。
「おはよ〜、宝」
「母さん、なんでこんな朝っぱらから」
「男所帯でちゃんとご飯食べてるか気になって。あ、いやだわ、そのシャツ!彼シャツね!?彼シャツ萌えね♡」
「そこには触れないで」
朝から押しかけてきた母親ちさに、強制的に着せられているキルシュのシャツを盛大に見られた。ちさはちょっと腐女子と言われる趣味があるようなので、玄関で萌え萌え言っている。
それよりも今日はオフなので母親に来られるとめんどくさいなと、宝は内心思った。
「さぁ〜、今朝のご飯は何がいい?」
「あ、ちょっと、勝手に入ったらダメだよ」
キルシュは宝以外を入れた事がないという自宅に母親とはいえ、勝手に入られたと知ったら怒るだろうか。ちさはそんな魔の恐怖が待ち構えてるとは知らずに、持ってきた食材と一緒にルンルンと台所へ向かい勝手に朝食を作り始めた。しばらくすると朝食が出来上がり、ご飯と味噌汁と焼き魚とシンプルな和食が完成する。
「じゃ〜ん!さぁ召し上がれ〜」
「召し上がれ〜って、あのねぇ・・・」
「宝」
モソモソと起きてきたキルシュが、ちさを見てめちゃくちゃ睨んでいる。母親の命が危ない!
「お、おはよう!キルシュ!今日の朝食は焼き魚だよ〜、おいしいよ〜、さぁ食べようか」
「おはよ〜、キルシュ君。健康な身体は健康な朝食からよ」
「・・・」
黙って席に着くキルシュは黙々と朝食を食べ始めた。ちさのご飯は本当に美味しいので、多分美味しいのだろう黙々と食べている。
「美味しいでしょ〜。宝には嫁入り前に美味しいご飯の作り方を教えないとね。あ、それともキルシュ君に教えた方がいいかしら?」
「ひぃっ!!!」
もうこれ以上キルシュを煽らないでほしい。早く帰って、命が本当に危ない!宝は心臓がバクバクした。
「宝に色々教え込むのは勝手だ、飯は美味い、だが二度と勝手に入って来るな」
「じゃあ次から許可を取ればいいのね!オーケーよ、今度は手土産を持ってくるわ。いいお酒見つけてね〜」
「なんか違う」
とりあえずキルシュの怒りが爆発する前に、ちさは帰って行った。キルシュはソファーでタバコを吸っている。なんとなくご機嫌直さないとと思い、宝は隣に座ってピッタリくっついてみる。
「機嫌取りか」
「えっ、いやっ、その・・・灰皿!新しい灰皿そろそろ買わないとなぁ〜・・・なーんて」
「怒ってない」
「ウソつくなよ!人の母親めちゃくちゃ殺しそうな目で見てたよね!?」
「ちさは危険だ」
「な、なんで?」
「お前のことを俺から横取りしようとしている」
宝は、ちょっとその意味が不明だがとりあえず母親には注意しておこうと思った。朝食も済ませたし、なにより今日はオフなのでどこかに出かけようと支度する。
「キルシュも一緒に行く?」
「いや、俺は今日仕事だ」
「そうか、うん、じゃあ一人で買い物行って来る」
「知らない奴に声かけられても着いていくなよ」
「子供じゃないから、はは」
「子供じゃないから、路地裏で輪姦されまくってハメ撮りされたあげくにまたオークションに・・」
「そのネタもういいよ」
宝は朝からドン引きして、さっさと買い物に出かけた。今日は少し遠出して、第6区に行く事にした。かつては渋谷と呼ばれた街は、若者達が多く住んでいる。治安はそこそこだ。店を歩いていると、露天商の灰皿が目に止まった。白い陶器に犬の足跡が点々とプリントされている。可愛い灰皿だ。
「これにしようかな」
「あのー、すみません。道を聞きたいんですけど」
「え?」
横を見ると茶髪で薄茶色の目をした、セミロングヘアの可愛い女の子が立っていた。道を訪ねてくる。中学生くらいだろうか。
「ここに行きたくて、でもあたしこの辺詳しくないから」
「あー、えっと、うん、近いし大丈夫かな。わかった、案内するよ」
「わー、ありがとうございますー」
女の子は可愛い笑顔で宝の腕にしがみつく。巨乳っぽい胸が腕に当たりドキッとした。宝だって男だ、可愛い女の子にはドキドキする。しかもまともに女の子と喋ったこともない。
デレっとしながら携帯デバイス頼りに目的地へ向かうが、どんどん路地裏の奥へ行ってるのに気付いたときには遅かった。周りには明らかに普通の市民じゃない人達に囲まれ、宝は腕を両脇から少年達に拘束された。
騙された!
年端のいかない子供までいる。彼等はおそらくストリートチルドレンと呼ばれる集団だ。中には金の為なら何でもやるたちの悪い者もいる。
「男ってチョロいよね、すっかり騙されて」
「なんでストリートチルドレンが、こんな所に・・・君らの縄張りはもっと奥の地区のはず」
「あ〜、出稼ぎってやつ?最近、バケモン共がスラム区にも多く出現してねー☆」
派手なピンクの髪に焦げ茶色の目をもち、口元のホクロがちょっとセクシーだがチャラそうな男が喋りだした。
「天剣に目を付けられるぞ」
「そこは上手くやってるもーん。とりあえずコイツさっさと輪姦して、ハメ撮りしてからオークション売り飛ばすかー☆」
キルシュのネタが現実化しようとしている!!!宝はめちゃくちゃ焦る。今日はさすがにすぐキルシュはここまで来れない。派手なピンクの髪の男が、宝の前髪を掴んでぐっと顔をあげさせてマジマジと見てくる。
「面は雑魚並みだけど、片目はいい紫色だ。売れそー♡」
「ひっ!」
ジジッ
『そいつから魔力反応あるよ。混血じゃない?リーダーが連れて来いって』
「マジかー!ラッキー、バカ高く売れる」
派手なピンク髪の男の耳元から、無線なのか別の人間の声が指示してきた。宝はそのままストリートチルドレン達に攫われてしまう。
道中目隠しされストリートチルドレンのアジトに連れて来られた宝は、ようやく目隠しを外された。地下室のカジノなのか陰気な空気の部屋の匂いがする。後ろ手に縛られて椅子に座らせられ、両脇には派手なピンクの男と無口な紫色の髪の青年が立っている。
その正面のソファーに、灰色の髪に青い目の男が座っている。年齢はわからないがややガタイのいい体格で、見た目は端正な顔をしていた。男前という感じだ。
「アズ、よくやった」
「でしょー♡♡♡玖音さんのために、オレもうめっちゃがんばったんで〜♡」
「バカも使いようだね」
「おい!こら、ショート!」
ピンクの髪の男は【アズ】、正面のソファーに座るのは【玖音(くのん)】、離れてパソコンを弄る上は金髪で毛先は黒い緑目の高校生くらいの少年は【ショート】という名前らしい。
「はいはーい!あいらも大活躍しましたー!ね、コノエも見てたでしょ!」
「・・・」
「あいらはデカ乳しか取り得ないもんね」
「ショート!」
宝を騙した可愛い女の子は【あいら】、巨乳に腕を挟まれても無言な長身の青年は【コノエ】という名前らしい。仲間うちの口喧嘩の間を割ってリーダーらしき、玖音が話しかけてきた。
「で、お前の名前は?」
「・・・田坂タカオ・・です」
本名を名乗れば家族にも危害が及ぶかもしれないと、咄嗟に偽名を名乗るがすぐにバレた。
「【田中宝】、20歳。一般市民だけど異界種との混血としてオークションに売買された所を天剣に保護され、現在天剣警備部警官。ウソよくないよ」
ショートがパソコンを眺めながら宝の事を調べ上げた。セキュリティの高い天剣のコンピュータにアクセスしたのだろうか、ハッキングの才能があるようだ。玖音はアズに宝を自分の所に連れてくるよう目線で合図した。
アズは宝の腕を持ち上げて玖音の前に立たせる。怯える宝をじっと見ると、シャツを引っ張って前を強引に開く。弾け飛ぶボタンが地下室にコロコロと響いた。玖音は宝の首に巻かれた銀の鎖に気付くと、触れる。だがその瞬間電撃が走り手を引っ込めた。
「ほう、制約の鎖。お前、【パピー】の犬か?」
「パピー?」
「あぁ、今はキルシュとか名乗ってたかな。本当の名前は知らねぇ。天剣の狂犬とかあだ名まで付けられて、あいつも堕ちたよな」
「キルシュを・・・知ってるの」
「まぁ、昔少しな。東京事変以前に外国であいつがストーリーチルドレンやってた頃からこのUnderBlackDogでつるんでたからな」
「アンダーブラックドッグ・・・」
「俺達は行き場のない奴らの墓守なのさ」
UnderBlackDogと呼ばれるストリートチルドレンとキルシュの関係はなんとなくわかったが、宝はここから抜け出す方法を考えた。
玖音は宝の身体をマジマジと見てある事に気付く。
「お前、パピーの犬やってるのか?どうせ魔力の供給がなんだかって騙されてんだろ?ついでに相当可愛がられてるんだろ、鎖骨の歯型とキスマーク」
「っ!?」
玖音は足で宝を床に蹴り倒すと、腹の辺りを靴で踏みつけた。宝はがんばって隠したが、襟の空いた服を着ていたので少し見えていたのだ。
「うぐっ!?」
「もうお手付きでつまんねぇな。パピーと同じく売り飛ばす前に色々仕込んでやろうと思ったが」
「あんたは、キルシュの何なんだ」
「まぁ、初めての男っていうのか?ストリートチルドレンやってたからてっきりヤりまくってたかと思ったら、意外にも処女童貞だったわけ。どっちも奪って金持ちの変態に売ったら、東京で再会した頃には淫乱な雌犬になってたけどな」
「・・・なんでそんなこと、仲間じゃなかったの」
「なんでって、生きるのにはやらなきゃいかん事があるわけよ。あいつとの思い出話はつまんねぇから、俺と楽しいことしようか。アズ、ベッドに拘束しろ」
「は〜い☆」
玖音の何でもないようなキルシュの昔話をあっさり聞かされ、宝は人間以下の扱いをした玖音が許せなかった。
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