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弱点
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たどり着いたアパートのニ階、角部屋。
なかなか鍵穴に鍵を差し込めず、モタモタしている内に英雄が壁にもたれてウトウト船を漕ぎ始めてしまった。
「おい、寝るな、寝るな」
「んー、俺、寝てないよ?」
肩を貸してなんとか立たせ、共同領域のリビングまで歩かせる。
ふにゃあとこちらの気が抜けるゆるゆる笑顔を返されると、英雄の顔面に免疫がある力也もうっかり流されて「うん、寝てないな」と頷きそうになる。
本当に、顔が良い。
性格も良い。
頭も良い。
体格だって、細身で全体のバランスが良すぎるからモデルにならないかと声を掛けられるのは日常茶飯事だ。
近所のジムに英雄と一緒に通っているが、そこでもジムの広告塔にならないかと熱心に声を掛けられ断るのに苦労していたのを見ている。
本人は、自分の容姿になにも思うことが無いらしく、将来もそれを活かした仕事に就くつもりは全くない。
勿体無いよなぁと、可も不可もない平凡顔の力也は常々思っているが口に出したことはない。
目立つ分、苦労しているのも見ているからだ。
「ほら、水飲んどけ」
「はーい」
ふわふわ背景に花の幻影を背負い、コクコク素直にグラスから水を飲む英雄。
酔っ払いモードの英雄は、周りへの警戒心が無くなるので目が離せない。
合コンで英雄のことを気にしていたのは、思い出話がきっかけでは無く、あみだくじで席が離れたときからだ。
「お酒には、本当に気をつけろよ?
女子にお持ち帰りされてのデキ婚ルートしか見えねぇから」
「お持ち帰り?
ふふ、力也にされてるねぇ」
全然事態の深刻さが伝わらないな。
去年の二人の成人式後、澤家を家に招待して両家で飲んだ。
その時英雄は、力也の兄に注がれるがまま飲みまくり、ネジが緩んでなんでも素直に答えだしてその場を沸かせた。
英雄の妹が一番面白がっていたよなぁ。
まぁ、当の本人は記憶を飛ばして二日酔い。
翌日は使い物にならず、英雄に背負われるようにしてここまで帰ってきた。
「今日で完全無欠のヒーロー、英雄の弱点が酒だってバレたんだぞ?
週明け、女子から頼まれた合コンの誘いが山ほどくんだろうなぁ。
女子を一本釣りされるって、お前に合コン話すんのは周りが避けてたのになんで来るかなぁ」
「ヒーローは力也で俺じゃない。
何言ってるんだ?」
なんて非常識なと怒り出した英雄は酔っている。
酔っている英雄が口にするのは、百パー本人にとっての真実だと知っている力也にとってはなんとも困る内容だ。
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