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五輪
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赤い絵の具は数日頬に残ったままだった。部屋に戻ると、間宮が口をあんぐりとあけて、ボクの肩を揺さぶりながら「誰にやられた?!イジメ!?俺がぶっ飛ばしてやろうか?!」なんて言ってくる程に、ボクは悲惨な格好だったらしい。
間宮の声が掠れていた。昨日、散々鳴かせたからだろうと思うと、ぢくり、と胸が痛んだが、それもお構いなしにとても心配そうな眼差しを向けてくるのは悪くないと思った。
ボクは、こんなに執着する男だったのだろうか。はは、自嘲が漏れるよ。
本当に、突然絵を描きたくなったのだ。ノバラのように美しいものは出来なくても、だ。その日を境に、毎日、毎日、美術室に通いつめた。そこにはノバラがいて。ボクの描きかけの絵があって、風がまた、生ぬるくなっていた。
もう、時期に五月がくる。
蒸し暑い五月が、ボクの嫌いな五月が、くる。アナタの生まれた、五月が。
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