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十輪
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あ、あ、ぁぁ、ぁ、ボクは、ボク、は……!
「ノ………バラ……!」
あの日キミを殺したボクは、キミに殺されたんだ、そう、あの日、あの日が、ボクたちを狂わせた。そうだ、おかしいと思ったんだ、だからキミはボクに「また、一緒に絵が描けるなんて夢みたいだ」なんて言ったんだ。だからアナタは「一人なの?」と聞いたんだ!ボクは!粟井ノバラを殺した。親友を殺した。凡人のボクの作品になればいいと、天才のキミを薔薇の花瓶にした。そしてボクは二つになった。ボクはキミを愛していた。でもオレはキミを愛していなかった!
だからキミは言ったんだね、「来世で」なんて、そんな呪いをかけたんだね?!
そうか、ならば、この世界は、やりなおしか。キミが望んだもう一度は、これだったのか、ノバラ…!
「君は僕の死を望んでいるのだろう、だからこの絵をあげるよ。無残に!何度も!君に殺されて!息もできない僕をね!」
キミのキャンバスは、真っ白だったのに。ボクがキミの真似事なんてしてしまったばっかりに、初恋は憎悪を帯びて死に変わった。
「君は残酷だ。…今日は僕の生まれた日でもあるのに、僕の死んだこの年に、その絵を僕にはくれないのだから。」
ボクの、愛は。
アナタの誕生日に、白いつつじの花を贈ることだったのだろうか。それともキミの餞にすることなのだろうか。
本当に、本当に、それがボクの、恋、なのだろうか。
間宮を、愛しているのは、本当にボク、なのだろうか。この胸の中には、ボクではない彼がいるのではないだろうか、わからない、わからないよ、ただ、ボクは…!!
酷く汚れてしまった、自分の描いていたキャンバスを眺めると、完璧に描かれたキミの死を見ると、ますます分からなくなった。
ボク、は。
ダレ、だ。
「…許して。ノバラ」
風が生ぬるくてたまらない。真実をいつもボクは知り遅れる。狂気とは、愛とは、嫉妬とは、憎悪とは、…自分とは、なんなのか。伝えたいと描いたノバラは死んだ。死にたいと願っていたボクは死んだ。人を愛してやまない彼も死んだ。ボクとオレを別々の人間として接してくれた、あの人も、死んだ。
それでもなお、またこうやって繰り返すのは、ノバラ、キミがあまりにも孤独だからだ。キミがボクを愛しているからだ。
「今更遅いよ。」
あぁ、もう、参るなぁ。
ボク、はキミを愛しては、いない。
この先も、ボクはキミを愛することは出来ない。
ボクの中に「ボク」はいないのだ。
呪いのように、執着のように、「オレ」が生きているからだ。
許してくれ、許してくれ、ノバラ、ごめんなさい、ボクを、許してくれ、許して、
キミの冷たい瞳がボクを嬲る。
それでもアナタの甘い眼差しがボクの、ボク達の心を焦がすのだ。
「死んじゃえ。」
夏がくる。蒸し暑い、あの夏が。
END
つつじの花言葉
白→初恋
赤→恋の喜び
野薔薇の花言葉
天才
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