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秘めた恋心
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高校一年の夏、涼也は信号無視をした車にはねられかけたことがある。
その日は雨が降っていて、遅刻しそうだったこともあって急いでいた。横断歩道で青に変わった瞬間、駆け足で渡り切ろうとした時、白い軽トラックが突っ込んできた。
眩いヘッドライトと、急ブレーキの嫌な音が迫り、ああ、自分はここで死ぬんだなと漠然と思った。
しかし、轢かれる寸前に影が過ぎり、何かに体を抱き込まれたかと思うと、歩道へと倒れ込んでいた。
運転手の男が車から降りて謝ってきたのに返事をしながら、何が起こったのかはっきりと分からずにいると、傍らにいた誰かが頭を撫でて言った。
「良かった、無事で」
その男のきつい目元が優しく細められているのを見て、ようやく理解が追いついた涼也だったが、しばらくその表情に見惚れて動けなかった。
たった今その男に助けられたせいなのもあるが、入学したての時から怖いと恐れられている真琴の優しさに触れて、心が揺さぶられてどうしようもなくて。
「あり、がとう……っ」
ほっとしたのもあるが、何故だか無性に泣きたくなって泣いてしまっていた。
「お、おい、大丈夫か」
慌てながらも、宥めるようにくしゃくしゃと頭を撫でる手が温かい。
その瞬間、涼也は確かに真琴に恋をした。まるでドラマのような出来事と恋の仕方だが、それから自然と真琴を目で追うようになりながらも、どうしても近付くことはできなかった。
少しでも近付くと、あっという間に自分の気持ちが見抜かれてしまうことを恐れて。
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