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悪夢
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俺を置いて行かないでっ
嫌だっ嫌だ嫌だ嫌だっ
どうして……
何で俺だけ…………?
置いていかないでよ
俺もそっちに連れてってよ……
「…………の!桐野っ桐野!」
「ゃっ……だ、れ…………やだっ…」
目が覚めたのか分からない感覚で起きれば俺を呼ぶ声が聞こえた。誰だか分からなくて伸びてくる手を振り払い逃げるようにすればガタガタ震える自分を自分で抱きしめ混乱していた。
「ゃっ…触らないでっ」
「桐野っ……桐野俺だよ栗原。分かる?」
「はっ……はぁ、はぁっ…………く、りはら……くん……?」
「そう栗原拓也。怖い夢でも見た?凄いうなされてたから……。」
夢。何度も何度も見たあの夢。震えが止まらない。忘れたくても忘れられなくて俺を苦しめる。優しい栗原くんが俺を落ち着かせるように優しく抱きしめてくれた。優しく甘い香り。震えもおさまり呼吸も落ち着いた。
「手……叩いてごめんなさい…痛かったよね?」
「だいじょーぶ。落ち着いた?何か温かい飲み物持ってくるよ。」
「ま、待ってっ。もう少しだけ…………行かないで…………」
俺を抱きしめるのをやめてリビングに行こうとする栗原くんに抱きついた。何も言わずに優しく頭を撫でてくれ抱きしめてくれた。あったかい。落ち着く。
「よしよし。桐野が満足するまでここにいるよ?それとも一緒にリビング行く?」
「ん……行く…………。」
「よし、じゃあ行こうか。」
まだ怖い。ゆっくり離れると手を繋ぐのは恥ずかしく服の裾を掴んでついて行った。栗原くんは嫌がりもせずにゆっくりと歩いてホットミルクを作ってくれていた。メープルシロップを入れると美味しいんだよって笑ってくれた。優しさに胸が締め付けられる。
「美味しい……。」
「そ?良かった。」
ソファに座り寒くないように肩に膝掛けをかけてくれた。隣に座ってくれてる。本当にどこまでも優しい。
「ごめんねこんな時間に起こしちゃって。」
「平気平気。気にすんな。」
「………………」
「桐野。大丈夫だから。迷惑じゃないし桐野のせいでもない。俺を頼ってよ。な?」
俺の心を読み取られてるのか少しだけ気持ちが楽になった。飲み終わったコップを洗いに行こうと立ち上がる栗原くんに俺はまた服の裾を掴んでついていく。
「マントみたいになってるぞ?」
「あ、肩にかけたまま来ちゃった……」
そのまま寝室に入るとベッドに入るように促されるがまた怖い夢を見てしまうと思って足がすくんでしまった。
「桐野?」
「ううん、何でもない。もう大丈夫。」
服の裾から手を離すと膝掛けを畳んで近くの机に置いた。すると後ろから抱きしめられビクッとしてしまう。不思議そうに顔をあげると優しく頭を撫でられた。
「大丈夫って嘘だろ。体震えてるし。まーた迷惑かけちゃうって思ってんだろ?」
「…………でも…」
「でもじゃない。頼ってって言ったろ?俺は全然平気。」
震えてるの自分でも気づかなかった。寒いからとベッドに入ると優しいオレンジ色の光にし向かい合うように寝転がった。これはこれで恥ずかしい。
「栗原くん……眠くなったら寝て良いからね?」
「ん、ありがとな。桐野も眠くなったら寝ろよ?もし……もしまた怖い夢見たら俺が起こすし俺が寝てたら起こしていいから。」
「………………うん。」
「そう。良い子だ…。」
栗原くんは夢のこと何も聞かなかった。きっと優しさで聞かなかったんだと思う。俺が眠るまでずっと起きててくれた。抱きしめてくれた。頭を撫でてくれた。
ごめんね。
ありがとう。
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