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消えてしまいそうで
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「……っ。ぅ……ん………………んん……っ」
深夜3時過ぎ。うなるような声が聞こえ目が覚めると目の前で苦しそうにしている桐野に驚き飛び起きた。
「ん………桐野?桐野っ桐野!」
「ゃっ……だ、れ…………やだっ…」
目が覚めた桐野は息が荒く体を起こし俺が見えれば酷く怯えていた。パニックになっている。手を伸ばせばパシッと手を叩かれた。ちょっと悲しかったが俺が誰だか分かってないみたいだ。異常なまでに震える桐野を無理矢理にでも抱きしめた。
「ゃっ…触らないでっ」
「桐野っ……桐野俺だよ栗原。分かる?」
「はっ……はぁ、はぁっ…………く、りはら……くん……?」
「そう栗原拓也。怖い夢でも見た?凄いうなされてたから……。」
良かった。俺だと分かってくれた。優しく背中を撫でたりポンポンと優しく叩いたりした。どうやら落ち着いたようだ。あんなにうなされていったいどんな夢を見たのだろう。でも聞かなかった。落ち着いたばかり桐野に聞いたらまたパニックになると思った。
「手……叩いてごめんなさい…痛かったよね?」
またそうやって人の心配をする。全然悪くないのに。自分の心配しろよ。
「だいじょーぶ。落ち着いた?何か温かい飲み物持ってくるよ。」
「ま、待ってッ。もう少しだけ…………行かないで…………」
驚いた。いきなり抱きつかれて危うく倒れそうになったがベッドに座り優しく抱きしめた。放っておいたら消えてしまいそうな桐野を愛しく思えた。すがるようにぎゅっと抱きつく桐野は可愛い。こんな状況だが可愛いな。
「よしよし。桐野が満足するまでここにいるよ?それとも一緒にリビング行く?」
「ん……行く…………。」
「よし、じゃあ行こうか。」
なんだ素直になれるじゃん。ていうかなにその小さな子供みたいなことすんの?服の裾握ってついてくるとか可愛すぎるんですけど?まだ怖いのか。不安そうな顔をしてるのでそのままにしておいた。
小さい頃に親が作ってくれたホットミルクにメイプルシロップ入れるやつ。美味しいんだよな。桐野気に入ってくれるといいけど。
「美味しい……。」
「そ?良かった。」
流石にリビングは冷えきっていた。温かい飲み物を飲んでいるとはいえ心配だったので肩に膝掛けをかけてあげた。そんでもって俺の体温をあげようとくっついた。まぁ俺がくっつきたかったんだけど。
「ごめんねこんな時間に起こしちゃって。」
「平気平気。気にすんな。」
「………………」
また何か良からぬこと思ってんなこいつ。どうしてマイナスなことばかり考えるのか。夢の内容は知らないがあの状態になるということは過去に何かあったのか?
「桐野。大丈夫だから。迷惑じゃないし桐野のせいでもない。俺を頼ってよ。な?」
小さくコクンと頷いたので良しとする。頷くのかなりぎこちなかったけどよく頑張った。飲み終わったのを確認すると頭を撫でて洗おうと立ち上がればまた服の裾を掴んでついてくる。
くそ……可愛すぎ。
「マントみたいになってるぞ?」
「あ、肩にかけたまま来ちゃった……」
それはいいんだけど可愛すぎて俺の顔変な顔してないといいな。さて、と。眠れるわけないよな直ぐに……。寝室に入るとベッドに入るように軽く背中を押したが体がかたい。やっぱり怖いか。
「桐野?」
「ううん、何でもない。もう大丈夫。」
嘘だな。バレバレだぞ。律儀に畳んでくれて有難いな。我慢出来ずに後ろから抱きしめた。びっくりさせたけど嫌がらずに大人しいしそのまま顔をあげて見られるとやばいんだが。そういや抱きしめる行為ってアウト?手遅れだよな。それにまた震えてるし。よっぽど怖かったんだな。
「大丈夫って嘘だろ。体震えてるし。まーた迷惑かけちゃうって思ってんだろ?」
「…………でも…」
「でもじゃない。頼ってって言ったろ?俺は全然平気。」
流石に寒いのでまだ温かい布団の中に入ってもらい向かいあって寝転がった。じっと見ていると恥ずかしかったのか俺の胸に顔を隠すように押し付けてくる。
(兄貴……俺来月まで耐えれそうにない。)
「栗原くん……眠くなったら寝て良いからね?」
「ん、ありがとな。桐野も眠くなったら寝ろよ?もし……もしまた怖い夢見たら俺が起こすし俺が寝てたら起こしていいから。」
「………………うん。」
「そう。良い子だ…。」
そうそう。そうやって迷惑とか気にせずに素直になればいいんだよ。背中に腕を回して苦しくなるといけないのでやんわりと抱きしめた。暫くすればスヤスヤと寝息が聞こえ安心した。
「よく目の下にクマ作って学校来てるけど怖い夢結構見てんのかな……。」
夢の内容が気になるが桐野から話してくれるまで黙っていようと思った。家族のこととかも。
うとうとすると朝まで何事もなく俺たちは眠りについた。
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