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帰したくない
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「何作ってくれるのー?」
「フレンチトーストとハムを混ぜたスクランブルエッグ」
「楽しみだな。俺なんか手伝うことある?」
「ううん。直ぐに出来るからゆっくり待ってて?」
まるで夫婦みたいだと我ながらそんなことを思ってしまい頬を赤らめつつ朝からパソコン作業をしている栗原くんをチラ見した。朝から大変そうだな。食パンを浸している間にハムを刻み溶いた卵に入れて混ぜパパッと焼いてお皿に盛り付けていく。フレンチトーストも出来ればメイプルシロップをかけてパソコン作業の邪魔にならないように遠目に並べていくとそれに気がついてパソコンを閉じて飲み物を持ってきてくれた。
「あ、服畳んでくれたんだ。ありがとう。」
「別にいいよ。早く食べよっ。うまそーっ。」
いただきます、と言うと栗原くんは幸せそうに食べていた。良かった美味しく作れて。自分も食べていると視線を感じ栗原くんと目が合いどうしたのか首をかしげた。
「な、に?何かついてる?」
「んーや?桐野良いお嫁さんになりそうだなーって。」
「男はお嫁さんになれないよ。」
「桐野ならなれそう。」
「なにそれ。」
他愛ない会話が続き食べ終わると食器を片付け洗っていく。ふと背後に気配を感じ振り返る前に栗原くんに抱きしめられ危うく食器を落としそうになった。顎を頭に乗せて体重をかけてくるので困った。
「栗原くん重い……。ちょっともう…洗えないんだけどっ。」
「んー…………。」
「くーりーはーらーくーんーーーーっ。」
「下の名前で呼んでくれたら離れる。」
「へ?」
名前?名前……。栗原くんじゃだめなの?下の名前でなんて別にいいけどなんか…そう頼まれると言いづらいというか。でも離れてくれないと洗えない。
「……………………ゃ……」
「ん?」
「た、くや……くん……。」
「よくできました。」
パッと離れてくれ安心すると残りの洗い物を済ませてソファにある自分の服を手に取った。寝室で着替えようと動けば直ぐに栗原くんに引き寄せられ足の間にスッポリおさまった感じになった。
「ちょっと栗原くん。」
「たーくーやー。」
「…………拓也くんっ。」
「なに?」
「離してくれないと着替えれない。」
「まだいーじゃん。」
まるで小さな子供みたいに言う栗原くんに困ってしまってされるがままになった。なんかやたらと抱きしめられてるような……。
「桐野抱き心地いいんだもん。」
「ぬいぐるみじゃないんだど?」
「ぬいぐるみみたいに可愛いじゃん。」
「………………ぬいぐるみはしゃべらないし動かない。」
「いーじゃん。なぁ……涼…。」
「ひゃっ!?いきなり耳元でしゃべらないでよっていうか名前っ。」
「かわいー。」
意地悪だ。もぞもぞ動くもがっしり抱きしめられてるので逃げようにも逃げれない。何かやり返そうにもそれもできない。
「いつまでこのままなの?」
「ずっと…………。」
(こんなの恋人みたいじゃん。)
「帰らないといけないし。」
「やだ。」
「子供じゃないんだからっ。」
「やだ。」
「………………」
やだやだって本当に子供みたいだ。幼稚園児レベルだ。このままでは帰れそうにもない。スリスリとしてくるしくすぐったい。どうしたらいい?
「くり、…………拓也くん離して……帰らないとっ」
「…………一人で寝れるの?」
「子供じゃないし今までだって一人だったしそのくらい平気だしっ」
「昨日の夜みたいなことが起きても……?」
「……っ………………」
「帰したくない……。」
なんで……
なんでそんな切なそうな声で言うの……?
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