アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
55
-
「なんかトラウマでもあるんすか」
わざと、そう聞いてみた。だって本人に聞けって言われたし。
でも、權さんは答えてくれなかった。
「……………別にないよ」
「…………そうですか」
ああ。信頼されてないなあ。
布が擦れる音に、目を開けて彼のほうを向く。またさっきの姿勢だった。長すぎるとか邪魔とか思ったことないけど、やっぱ髪かきあげてると格好いい。
「……………………………………………………する?」
「しろとか言いたかったんじゃないすよ。やですよ、そんな無理矢理」
「……………」
「嫌いならそれでいいですから」
「……………」
「………………だいたい、すんのもおかしな話だし」
「………まあな。……………」
「………………」
「や、でも、する」
「はい?」
なに言ってんだ、この人は。
「なんか君に弱み見せたみたいでムカつく」
「なにわけわかんない意地張ってんだ」
「する」
「しない。バカか。そんなんですんのやだよ」
「したいって言ったの宇多島くんだろ」
「言ってない言ってない」
「言った」
「言ったけど。違うじゃん、權さんが嫌なの知ってるし。訊かれたから本音伝えたけどじゃあ実際しましょうとはなんねーよ」
「でも本音だろ」
「そうだけど」
「なにがやなんだよ」
「そんな変な感じでしたくない」
「…………拒否られるとそれはそれでムカつくんだよな」
「バカなの?」
あ。笑ってくれた。
「………………慣れたいんだよ。いつまでもやだやだ言ってんのガキっぽいし」
「別にわがまま言うのってガキの特権じゃないっすけど」
「うるさいなあ」
「はー?」
「君だってしたいんだろ」
「したいです」
「うん」
「……………変われなんて一言も言ってねーけど」
「僕が変わりたいんだよ。ていうことで」
「えー………」
「なんだその不満そうな声は」
「いやあ。せっかく弱み見つけたと思ったのに」
「こら」
「冗談すよ。…………俺でいいんすか、するの」
「他に誰がいんだよ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 196