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2.理科室
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夕方になると、校舎内は文化系の部活で使わない限り、しんと静まり返っている。
今日は木曜日。
化学部はお休みだから、おれたち管弦楽部が利用されてもらえる日。
二年生のくせに、そこそこ弾ける郡司は、今度のミニコンサートでソロを任されていた。
今日は、その練習をしているはずだ。
第二理科室の側まで来ると、大河内先輩の声が聞こえる。
それは、低くトーンを落としているせいで聞きにくい。
多分、何も知らない生徒だったら、気づかずに通り過ぎてしまうくらいの。
「嬉しいんだろ?おれに抱かれて」
その声は続ける。
「悦べよ。ほら、郡司」
ガタガタと椅子が床を滑る音がする。
おれは思いっきり第二理科室の扉を引いた。
「はい、先輩!お楽しみはそこまで。そろそろ合同練習始まりますよ」
「小平」
制服のネクタイで両手を縛り上げられて、床に組み敷かれている郡司はボロ雑巾みたいで唆られる。
「覗き見なんて悪趣味だぞ」
「覗いていませんよ。時間だから教えに来ただけじゃないですか。先輩がいないんじゃ大騒ぎになりますよ」
「ち」
郡司に押し込めていたものを、乱暴に引き抜いてから、身支度を整える。
「……っ」
「こいつ、本当におれが好きなのかよ?小平。お前……」
「嘘に決まっているじゃないですか」
「何?」
「だって、大河内先輩、こいつのこと犯したいって言ってたし。いいきっかけかな〜なんて思って」
「お前な。これじゃ犯罪になるだろう」
「もう事実は消せませんよ」
「貴様」
「はいはい。終わりです。ね?郡司はおれが後始末しておきますから。どうぞ、お戻りください」
「ち、食えねえ奴」
大河内先輩は面白くない顔をしたが、ふと郡司に視線を戻す。
「強姦みたいで楽しかったぜ。また遊ぼうな」
第二理科室を出て行く先輩の後ろ姿を見て、流石に反吐が出る。
「悪趣味〜」
その間、一度も声を出すことのなかった郡司を見下ろしてみる。
紅梅色のワイシャツはもみくちゃにされて、そこから覗いている白い肩には、赤い痣がいくつも見えた。
両手を縛り上げられているネクタイは郡司のものなのだろう。
俯いたまま、身体を起こし、それを解こうと口元に持っていくが、上手く出来ないのだろう。
身体全体が震えているようだ。
「貸せ」
解くのを手伝おうと腕を捕まえると、郡司は肩を竦めて震えた。
そんなのはお構いないし、腕を引っ張ってからしゃがみ込むと、初めて視線が合った。
郡司は、大きな漆黒の瞳を濡らして泣いていた。
そりゃそうだ。
こんなひどいこと。
信じられないだろう。
「小平……」
「なんだよ」
「な、なんで、こんなひどいこと……」
ネクタイを解きながら、おれは平然と答える。
「そりゃそうだろう?お前、おれにひどいことしたし。仕返しだよ。仕返し」
「ひどいことって……」
とぼける気か?
本当にムカつく。
「しただろう?忘れたとは言わせないからな!」
怖がって震えているのをいいことに、一度身体を起こした郡司を、床に押し倒す。
「や、やめて……!」
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