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合わせ鏡
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「ただいま、兄貴」
「………」
二葉兄ちゃんは普通に挨拶したけど、ぼくはあの電話のことを思い出して黙ってしまう。
頬を膨らませて俯いてるぼくに、いつまでも根に持つなよ、と二葉兄ちゃんが耳打ちする。
「…ただいま」
「なんでそんなに嫌そうなんだ?悲しいなぁ」
ぼくだって悲しいです。生殺しにされたら相手が一葉兄ちゃんでも恨みます。
ぶんむくれたぼくの頬を、二葉兄ちゃんがつねったり引っ張ったりして遊んでくる。
「見たいテレビがあったんだってさ。車でも見れるよって言ったのにすねちゃって」
「この時期の特番、あんま面白いのないだろ?そんなに見たかったのか」
「……いいもん、録画してきたし」
二葉兄ちゃんが気を利かせてくれた嘘の話題にのっかって、むくれたまま靴を脱ぐ。
上着を脱いで上がろうとすると、2階からすごい勢いで階段を駆け下りる音が聞こえてきた。
「よーっす!二葉兄久しぶりじゃん!お土産は?」
「んなもんないっつの。あんまり家ん中ドタバタするなよ?」
第一声がお土産の要求。やっぱりいつもと変わってない。
二葉兄ちゃんにあしらわれてむくれたその顔が、ぼくの方へ向けられる。
鏡を見ているみたいにそっくりな顔。一瞬ばっちり目が合って、合わせ鏡が口を開いた。
「よぉ、分身」
「分身いうな。……ただいま、駆」
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