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食事を終えてお茶を飲んでいると、お母さんが台所からみかんを持ってきてくれた。
皮の硬いみかんを苦心しながらむいていると、駆がぼくの手からひょいとみかんを取る。
また、どこまでぼくのものを取ったら気が済むんだろう…。
「歩むき方きったねー」
「うるさい。返して」
「ボロボロこぼすよりさ、こうやってむいた方がはえーよ」
そう言うと、駆はお盆の上に積まれたみかんをもう1個取ると、へたの裏側の真ん中に当てた親指に力を入れて、綺麗にみかんを半分に分けた。……すごい。
手慣れた感じでみかんの皮をむいている駆に思わず見入っていると、駆はむき終わったみかんを一粒、ぼくの口に突っ込んできた。
「自分と同じ顔に見つめられるとか、ぞっとしないな」
「むぐ…生意気な…」
「別にいーけどね。ところでむき方ちゃんと覚えた?」
「………あっ」
「だと思ったよ。二度は教えてやんねーよーだ」
「いい。二葉兄ちゃんにむいてもらう」
「まーた二葉兄二葉兄ってべったりかよ、カップルじゃあるまいし」
その言葉に思わず顔がひきつる。
自分で自分の心臓の音が、ばくばくしているのがよく分かった。
…落ち着け、ただの冗談だ。駆はぼくと兄ちゃんが付き合ってるなんて、知らないはずだし。
動揺を悟られたくなくて下を向いてみかんをむき始めた時、傍らの携帯が鳴った。
ぼくの携帯の着メロじゃない。顔を上げてみると、一葉兄ちゃんの携帯からだった。
「…誰だろう…?」
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