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電話・そのに
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『先生……、先生がそばにいてくんないと、寂しいよ』
会えない距離に引き離された途端、こういうことを言ってくれる。
それを素直に嬉しいと思えないまま、ああと生返事を返すと、また伊織は拗ね始めた。
『なんか今日先生冷たい。なんで?』
「なんでも何もあるか。忙しかっただけだよ」
忙しいと言ったのは本当だが、弟や母がいる手前あまり堂々と会話はできない。
それに、あいつがそばにいると、伊織の存在がどうしても霞んでしまう。
伊織に申し訳ない気持ちが湧いてしまって、手放しで優しくなれなくなる。
『……忙しい時に電話するから、やっぱり怒ってたんだ』
「だから怒ってねえよ。そんな不安な顔するなって」
『見えないのに、分かるんだ?』
「分かるよ、だてに恋人やってないからな」
『っ……』
言う前につい周りを見回してしまう。
伊織が顔を赤くしているだろうな、という様子も手に取るようにわかった。
…本当は、そんな風に俺のことを想ってほしい相手は、お前じゃないんだ。
自分が苦い表情になるのが分かって、言えない真実を胸の内にぐっとしまいこんだ。
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