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す、き
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「ちょ……歩、ここは」
「……兄ちゃんなんか」
二葉兄ちゃんを正面から睨む。涼しげな目が、自分を見つめ返す。
すごく、綺麗だと思った。細面だし、二重のはっきりした目、うっとりするような黒髪。
自分だって目は二重だけど、顔は丸っこくて子供っぽいし、髪も色の薄いくせ毛だし。
兄ちゃんと自分を比較すればするほど、悲しくて泣き出しそうになる。
そんなことを考えたせいで、何を言いたかったか思い出せなくなった。
「…兄ちゃんなんか………嫌いだもん…」
「嫌いな相手なのに押し倒したり、やきもちを妬いたり?」
ぼくが大真面目な時だって、兄ちゃんは冗談を言ったりする。
真面目に言ってるのを分かっててこういうこと言う兄ちゃんが一番嫌い。一番好き。
ああもう、ぼくは何考えてるんだ。
ただ、兄ちゃんの目はすごく真剣で。
吸い込まれそうな気がして、自分から見つめたのに怖くなって。
気が付いたら、目を閉じてキスしてた。
「………んっ…」
兄ちゃんがどんな顔してるか分からない。でも、優しく肩を抱き返す感触があった。
たぶん、こんなぼくのことを、呆れながら受け入れてくれてるんだ。
抱き付いて唇を押し付けて、妙に長い数秒が過ぎた。さすがに息が、苦しい。
「ぷぁっ」
目を開いたら、軽く息切れしてるぼくと対照的に、兄ちゃんは平気な顔で笑ってた。
「もう………す、」
好きだよって言おうとしてふっと顔を上げた。そして固まった。
「…き」
部屋の入口に、駆が立っていた。
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