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家族写真
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◇ ◆ ◇
お昼頃になり、ふと親父の仏壇の前に腰かける。
笑顔で写っている写真がろくになかったおかげで、妙に面映ゆそうな顔の遺影が、記憶よりも一層鮮やかに見えた。
俺が教員採用試験に合格したとき、記念にと撮った家族写真の一枚。
ほぼ全員が朗らかに笑う中で、親父ひとりが相変わらずの仏頂面だった。
『もう、あなたったら…一葉の大事な記念なんだから』
『いいって母さん、親父の顔はいつもだろ』
『あっ、カズ兄それひっでー!』
『ねぇ兄ちゃん、もっかい撮ろ?目瞑っちゃったかも…』
『あーごめん歩、もうさっきのでフィルムない』
そんな調子で、嬉しい時も怒った時も表情を変えたことがなかったっけ…。
一度だけ、歩と駆が目を離した隙に脚立から落ちて大怪我をしたとき、親父含め家族揃って大泣きした時はあった。
母さんはどうか知らないけど、俺達子供が知ってる親父の顔は、常に無愛想だった。
だから、新任教師として出発して半年で親父が死んだ時、内心後悔した。
あぁ、最後の写真になるなら無理にでも笑わせときゃよかったな、って。
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