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夢の感触
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ぼくと駆が唯一、いやふたつだけ違うことがある。
ひとつは目つき、もうひとつは誕生日。
ぼくの目は丸くぱっちりとした目元なのと比べると、駆は目尻が上がっていて、理知的でとてもカッコよく見えて羨ましかった。今もずっと、密かなぼくのコンプレックスになっている。
誕生日は、ふたりが生まれた日、ぼくが産声を上げたすぐ後に日付が変わって、その後で少し遅れて駆が生まれた。だから違う日付で出生届が出されていた。
昔はそれ以外の違いは何もなかった。
いつからずれ始めたのかは…よく分からない。
ある日、お父さんが亡くなった日から数日経った夜、変な夢を見た。
夢の中で目を覚ましたぼくを、二葉兄ちゃんがつらそうな顔で見ていた。
それがなんだか心配で、その顔を覗き込んだら、不意にキスされた。
余りにも感触がリアルで熱っぽくて、でもとても心地がよかった。それに兄ちゃんがこんなことをするはずがない、だからきっとこれは夢だ、と思った。
あっという間に夢の中なのに睡魔に飲まれて、夢はそこでおしまいになった。
以来その夢がなんとなく忘れられなくて、でも二葉兄ちゃん本人にこんな夢の話はできなくて、でも誰かに喋ってみたくて、駆にだけ、こっそり『ないしょばなし』で打ち明けた。
『ねぇ、駆』
『なに?歩』
『ないしょばなし、してもいい?』
『いいよ。どうしたの?』
駆が目を閉じて、顔を隣に近づけた。ぼくはいつもみたいに頬をくっつけて、小さな声でその夢の話をした。
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