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ずれるふたり・駆
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◇ ◆ ◇
父さんが死んで数日してから、歩が不安げに打ち明けた『ないしょばなし』以降、すべてが少しずつずれていった。
当時の歩は本当に不安そうで、父さんが死んだせいできっと心が落ち着いてないんだと思った。だから何度同じ話をされてもちゃんと付き合ったし、なんでそんな夢を見るのか真剣に考えた。
そのうち、歩が俺じゃなくて二葉兄と一緒にいる頻度が多くなった。
最初の内は、なんとなく寂しいけど、もう子供じゃないからこのくらい普通かと思ってなんとも思わなかった。でも気のせいかと思った予感は、その内確信になっていた。
歩の二葉兄を見る目が、今までと全然違う。
それに歩は全く気付いていなかったし、気付かないうちにその眼差しに見たことない熱がこもっているのが分かるまでになって、怖くてたまらなかった。
歩がどこまで本気なのかが分からないのが怖かったのと、まるで糸が解けるみたいに、今まで一緒だったふたりが離れていくのが怖かった。
でも二葉兄は家族だ。それに男だし、本当に歩が好きになるはずはない、と思っていた。
『あのね。ぼく……都会の学校に、進学しようと思ってるんだ』
ふたりが最後にしたないしょばなし。
本気だ、とはっきり悟った。そこで初めて、すごく胸が苦しくなった。
歩だけじゃない。自分だって、家族にひとりの人間として恋してしまったことにようやく気付いて、泣き出しそうになった。でも泣くのをこらえて、すごい変な顔で笑った覚えがある。
『いいじゃん、歩が本当にそうしたいなら…応援するよ。……頑張れ』
こんなに苦しいのも、全部こいつのせいだ。
あぁ、ずっと応援するよ。だから早く、遠くへ行ってしまえ。
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