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逃げ水
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◇ ◆ ◇
飛び起きた瞬間に、まだ夢の中なのかと思った。
目の前に歩がいて、自分と睫毛がぶつかるほど顔を突き合わせて、心底心配そうな顔で俺を覗き込んでいた。
「駆、大丈夫……?」
目は大きく見開きながらも、急に覚醒してぼんやりとする脳内に、呼びかけられる歩の声が何度もこだまする。
ああ、これまだ夢なのか。
さっきは何度追いかけても引き離されたその姿が、目の前にあって自分を見据えてるんだから、こんなの夢じゃなきゃ説明がつかない。
それなら覚める前に捕まえておかないと。
「かけ……っ!?」
いつの間にか歩の右手を掴んでいた右手で顎を掴んで強く引き寄せた。もともと至近距離にあった顔がさらに近づいて、唇同士が触れ合う。
空いていた左手で歩の右腕を引っ張ると、抵抗もなくその軽い体がすとんと腕の中に落ちた。
「っあ…ぅんっ……!?ん…っ」
抱き止めて肩を引き寄せる。顎にやった手を離して、逃がさないように腰を抱いた。
離したくない。もう置いていかれるのはゴメンだ。
「ぁ…ん、ゃ…!」
歩が胸板を押して逃れようとする。体格はほとんど変わらないのに、歩が自分を押し返す力はやけに弱々しかった。
逃げようとする度、悲しいのと腹立たしいのがぐちゃぐちゃになって、体を引き寄せて舌を絡めた。
「ゃ…め…かけ、る…っん、ぅ…なんで…」
なんで?ふざけんなよ。
誰のおかげで、俺がこんなに追い詰められてると思ってるんだ。
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