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左の頬も差し出して
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「っつ…よりによって往復ビンタかよ」
薄赤い頬を押さえて、挑発するように睨み返す。
自分のやったことを考えればこのくらいは甘んじて受けてもよかったけど、つまらない意地が邪魔をした。
歩は憎しみやら悲しみやら恥ずかしさやらが混ざった目で俺を睨みながらしゃくりあげる。
「だって、こんなの…!こんなんじゃっ…」
「二葉兄ちゃんに顔向けできない、ってか?」
歩の涙が止まった。代わりに恐怖の色を浮かべた目が、涙を拭う手の隙間から覗く。
「な…んで…」
「やっぱ分かんなかったんだな」
歩は目を白黒させていた。この際、全て打ち明けてしまえと、深く息を吸った。
「あぁ、ゆうべトイレの外で聞いてたのは俺だよ。歩が散々二葉兄に喘がされてるところ、全部聞いてた。家じゃいつもあんな声で啼いてるんだって思った」
今まで隠していた思いやらなんやらが、堰を切ったように喉を突きぬけていく。歩が何かを言い返す前に、まくし立てるようにぶちまけた。
「そん時俺、すごい興奮したんだよ。歩があんな声出すんだって、あんな風によがってるんだって。あんなことされたって…多分、大好きな二葉兄にしてもらってんなら幸せだろうなって思ったよ。ゆうべのだけじゃなくて普段だって、本当に好きになった人にあんな風に笑うんだって、…俺にはずっとっ、笑ってくれることだって、もう、ほとんど、なくなって、なのにっ……、っんで、お前、なんかっ」
口からだけじゃなくて、目からも今まで堪えていたものが一気に流れ出していく。声に嗚咽が混じって喋り続けるのがつらくなっても、やめなかった。
ずっとずっと、隠し通して接するのがどれだけ辛かったか、知らないくせに。
隠してきたのは互いのためでもあったのに、こんな形でこのことを知って、お前はどうする。
この想いを知ってなお、俺を拒絶しきれるのか。
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