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夜風
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時が止まってしまえば、もしくは今日を飛び越えてくれればと願っても、夜は全部の生き物に平等にやってきた。
一緒に勉強して、一緒に遊び、一緒に眠った懐かしい部屋の扉が、何か地獄に似た怖い場所への入り口にすら思えて、ノブをひねるのに時間がかかった。
「駆」
他になんにも言葉が思い浮かばなかった。
真冬で寒いのに、駆は窓を開けて空を眺めていた。ぼくが入って来たのを見ると、窓を閉めてこっちに向き直った。
「よかった、来てくれて」
「……うん」
駆が自分の勉強机の椅子に座ると、自然とぼくは駆が使っているベッドに腰を下ろした。
「それさ、いいだろ」
「…うん……羨ましいよ」
本当に、うらやましい。ベッドだけじゃない、駆そのものが。
ぼくにないものを全部持っているように見えるから。
涼しげな目元も、要領のよさも、自分の方がほんの少しお兄ちゃんなのに、全部駆に持っていかれているような気が、昔からしてた。
「昔の話がしたいんだ」
駆は椅子の上でぐるぐると回りながら、ひとりごとみたいに言った。
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