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追えば離れる
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「夢の中で、俺はまだ中学生でさ。家の前にいて、歩が20メートルくらい離れたところで手を振ってんだよ」
状況をちょっと想像してみた。
「…駆、20メートルってどれくらい?」
「今その質問必要?あー、体育館でシャトルランする時の長さ」
なるほど、走ればすぐに追いつけそう。
「それで歩が歩き出してさ、俺、走って追いついてやろうと思ったんだけど、なぜか全く差が縮まらないんだよ。おかしいだろ、足なら俺のが速いのに」
確かに、ぼくと駆なら駆の方が1秒近く走るのは速い。それなのに追い付けないのは、やっぱり夢だからとしか言えない。
「試しに立ち止まってみたら、歩も立ち止まる。また走ったら歩も歩き出してさ、延々同じこと繰り返すんだ」
立ち止まれば、すぐ追いつけそうな場所にいるのに、どれだけ走っても追いつかない。
なんで駆はそんな夢を見たんだろう。
「夢の中じゃこれが夢だって分かんねーから、何度も嫌だって叫びながら追っかけてた。でも歩はずっと笑ったままで、またねって言いながらずんずん歩いてっちまう」
その夢でうなされる理由がいまいちピンとこない。
駆が訝しげにぼくを見て、それに気付いたっぽい。
「……わけわからんって顔すんな。じゃあお前は、二葉兄を追っかけるつもりで想像してみ」
そう言われると、分かりすぎるくらい駆がうなされた意味が分かる。
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