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わけもなく
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駆は机の上にあった卒業写真を手に取った。
窓からの月明かりがそう見せるのか、写真の中みたいな悲しげな笑顔が目に映る。
「立ち止まる度に俺だけが縮んで、子供の頃に戻るんだよ。しまいには4歳くらいになって、走ると足がもつれて転ぶ。5回くらい夢の中で転んでさ、そこで飛び起きた」
昼間、間近に見た駆の泣き出しそうな顔を思い出した。
「飛び起きたら、さっきは追い付けなかった歩の顔が目の前にあって、……逃がしたくないって思って…後は分かるだろ」
「…だから、ぼくに?」
駆は頷いた。
「…許してくれなくていい。ただ、理由は分かっといて欲しかったから」
まだ少し火照ったままの頬をちょっとつねる。
これも夢だったら、なんとでも言えるのに。ここにいることも今言われたことも全部現実なんて、ぼくには受け入れきれない。
「駆は……なんで、好きなの?」
「なんでって…なんで?」
「え?じゃあ、特に好きになった理由とかないの?」
「ない。強いて言うなら………ううん、ずっとそばにいたから…かな」
なんかすごくくさい台詞を言われたような気がする。
それって本当に好きなのかなぁ…。
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