アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
6
-
レオンはリンドールの街を巡回し、土地の地図を記憶しながら警備署に向かっていた。一通りリンドールの街を回った後、最後に市場に立ち寄って、昼食と警備隊への差し入れを買おうと歩き出す。
一番人気!と看板に書かれたマフィンを差し入れ用に買ったレオンが、昼食を求めて再び歩き出したところだった。
「あら、あんた騎士団の人かい?男前だねえ…良かったらうちのパンも買っていかないかい?フワッフワのパンで、この市場でも人気だよ~」
快活な笑みで声をかけてきた女性に、足を止めてパンの屋台を見る。並んでいるパンはどれもふんわりと焼きあがっており、美味しそうな焼き色と、パンの香ばしい匂いが食欲を誘った。
「…確かにうまそうだな。では、これもいただいていこう」
「おっ、そうかい?ありがとね!きっと気に入るよ」
まとめていくつか購入し、嬉しそうに手を振って見送ってくれる女性に一つ頭を下げると、差し入れと昼食の入った紙袋を腕に抱えて、レオンは再び警備署へと歩き出した。
人で賑わう市場を離れてしばらく歩くと、木々の緑豊かな中にひっそりと建つ、木造の建築物が見えてくる。平たい屋根のそれは、レオンが見慣れたものと同じ造りの警備署だ。警備署の向こうに広がるグラウンドからは、訓練中であろう隊員たちの声が聞こえてくる。
レオンが気配を消して警備署の中の様子を伺うと、一人の隊員が事務机に向かって書き物をしている背中が見えた。レオンはそのまま足音を消して、隊員の背後に立つ。それでも気付かない隊員に半ば呆れながらも、レオンは声をかけた。
「今日も平和か、リンドールは」
「!!!!!っえ、あっ、レオンギルド騎士団長?!はっ、今日も異常なしであります!はい!」
後ろからあえて少し大きめの声で話しかけたレオンは、びくりと肩を跳ねさせたあと、ドタバタと立ち上がって慌てて敬礼をする隊員の顔を見て、そうとはわからないように少しだけ表情を緩める。
「…俺たちが暇なことは、そこに暮らす人々にとっては良いことだ。…しかし、背後に立つ俺が話しかけるまで気が付けないほど油断しているというのはな…少しばかり、気を抜きすぎじゃないか?」
「はっ…申し訳ございません!」
強張った表情の隊員は、そう言って直角に頭を下げる。
「まあ、常に緊張を保ち続けることが難しいのは俺にもよくわかる。もし可能なら、警備署の事務机は、出入り口が見えるように配置を変えた方がいいな」
「承知いたしました!本日中に変更いたします!ご指摘いただき、感謝いたします!」
ハキハキとよく通る声でそう返事をした隊員は、びしっと気をつけの姿勢をとったまま、レオンの次なる言葉を待っている。レオンは緊張しているらしい隊員のその様子を見て、今度はわかるようにふっと微笑んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 26