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「例えば、要人の警護で俺たちが立っているのは、勿論その名目の通り、要人を護ることが第一の目的だ。しかし、それと同時に、要人を傷つける『悪人』を生まないためでもある」
負の感情は連鎖する。悪人を捕らえ、正しく裁くことができたとしても、もしその悪人を心から愛している存在がいたとしたら?
人を傷つけるということは、傷つけた自分自身のことをも傷つけ、その人を大切に思う人々すら傷つけることになる。
だからこそ、「人を傷つける人」を生まないことが、「人を守る」ことになるというレオン。警備隊を束ねるトップの存在の言葉に、感銘を受けた隊員たちは襟を正した。
「難しい仕事であることは間違いない。しかし、正しく訓練を続け、今まで人々を守ってきた俺たちにしかできない、大切な仕事だ。明日からの訓練は、そうしたことも考えながら立ち回ることを覚えていってほしい」
「はっ!!」
警備隊約三十名の返事に、レオンは一つ頷き、挨拶を終えた。最後に警備隊長が終礼を締め、警備署に残る当番の者たち以外は解散となる。
レオンは訓練期間中滞在する宿へと向かいながら、珍しく熱く語ってしまったな、と一つため息をつく。普段はあまり話す方ではないのだが、思っていた以上に素直な隊員たちに、レオンの方が影響されたのかもしれない。
もっともっと、育っていってほしいと、素直に思える隊員たちだった。
「…しかし、やはりリンドールはすごいな」
レオンはふと立ち止まり、精霊の森がある方角へと目を向ける。
「『レ・ファルラ』(火を灯せ)」
精霊の力を借りる言葉、通称「祈りの言葉」をレオンが口にすると、夜道を照らすように、空中に火の玉が一つ浮かび上がった。…いや、火の玉というより、炎の玉というべきか。
「すまないが、もう少し威力を弱めてくれないか」
レオンが語り掛ければ、その炎の玉は少しずつ小さくなり、明かりにちょうど良いくらいのサイズへと変化した。
「ありがとう、助かる」
ふっと微笑んで礼を言うレオンの視界には、薄らぼんやりとした光のようなものが無数に見えていて、それらのうちいくつかはレオンの周りをくるくると浮遊していた。
まるで喜んでいるかのようなその光は、普通人の目には見ることすらできない、精霊だった。レオンは幼少期、人さらいに遭ったことがあり、何も見えないような真っ暗闇の場所に、一日中閉じ込められた経験があった。
結局その時の警備隊によって救出され、擦り傷を負うくらいの軽傷で済んだのだが、その出来事をきっかけに、レオンは人よりも体の感覚を鋭くしていた。ちょうどそれと同じ時期から、不可思議な光、精霊の姿をうっすらとではあるが、認知するようになっていた。
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